小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ihatov88の徒然日記

INDEX|161ページ/164ページ|

次のページ前のページ
 

4 憩いの病院 4.3


 花粉症がひどいので、耳鼻科に行ったんです。鼻はズルズルで嗅覚がマヒして何を食べてもわからないし、鼻をかみすぎて耳まで痛くなってきた。こりゃ重症だ。

 日曜に出勤したので今日は休み。こういう業務をこなすには平日に限るのです。土日はどうしても病院に行きたい人が集中して混雑するのは世間の流れなので。

   ところがどっこい!

 耳鼻科に行くと大混雑なんですよ。今年の花粉症がひどいのではなく、待合室にはびっしりのおじいちゃんとおばあちゃん。
「まあ、年寄りは朝早い言うからなぁ」
と診察券を入れて待合室で名前が呼ばれるのを待つ。椅子には当然座らない。自分を除いた患者さんの平均年齢は自分の倍くらいあるので、そんな中で椅子に座れるはずがない。

 名前が呼ばれるのを待ちながらボーッとしていると、待合室で大声が飛び交うのです。ここはお年寄りの憩いの場になっちゃってるんです。お互いに耳が遠いのでどっちも大声なんです。否がおうでもお年寄りの会話が聞こえて来るんです。
「ところでよ、鈴木のじーさんや」
「なんじゃいな、吉田のばーさん」
「最近、大川のじーさん見てないのう」
「そーじゃのう、ここんとこ調子悪いらしいぞ」
「ほう、そうかいな。調子悪いんかいな」

 二人の笑い声が待合室にこだまする。
「ちょっと待った!」
ここは病院だよ。調子悪いから来るんちゃうの?
ここへ来て大きな矛盾を耳にして、話は続く。
「ばーさんはどうじゃ?調子は」
「どこも悪いとこなんかありゃせん」
「調子悪かったら病院来れんでのう」
「そうじゃ、そうじゃ」

 さらに大きな笑い声が響いた。
「やっぱり何か間違ってる」
ってことはこの待合室にいる皆さんは健康であるということですか?それを知って余計に調子悪くなってきた。ホンマに症状ひどい人がそうでもないお年寄りのために足止めを喰ってるではないですか。別に構わないのですが、そんなお年寄りを横目に自分一人が椅子に座らずに立っているのも複雑な気持ちになってきた――。

 そもそもどこも調子悪くないのに、お年寄りは何で病院に集まるのだろう?そこで巷で目にしたある政党のポスター、

  「後期高齢者医療制度、云々」

 ははーん、なるほど。これか。医療費がほとんどかからないから、特段に調子が悪くなくてもシルバーの皆さんは病院に集まるのだ。まあ、長いこと生きてたらどこかしこかはヘタってくるでしょうし、人間もメンテナンス必要やし、平均寿命を上げる一翼を担っているには代わりない……。確かに意味のある社会保障ではあります。

   それも、ちょっと待ったぁ!

 日頃政治には諦めに似た投げ遣り感があったけど、これは見直した方がいい。
 健康であるには医療費を国が負担することが最終的な方法ではないはず。お年寄りをに病院通いをさせる前に、生涯スポーツの助成をしたり、病気を治すより病気にならないような環境を造ったりするのに力をいれたら良いのでは?と思いました。やってるのかも知れないのですが当事者でないからいまいち伝わらない。このまま毎日病院が敬老会の会場ではセンセイ方も負担が大きいでしょうし。
 この先自分が後期高齢者の仲間入りをして「医療費の負担が大きい」とぼやくかもしれない。だけどもだけど、ですよ。

  「健康だから通院する」

これはやっぱり違うでしょう。これでは本当に治療が必要な人がタイムリーに治療を受けられない。時間的なものだけでなく、間接的に言えば必要不可欠ではない治療に多くの費用が投じられている現実と納税者のおサイフも然り。

 もうすぐ自分の名前が呼ばれる。マスクの内側はくしゃみしてとめどなく流れる鼻水や唾液でグシュングシュンです。そんな私を見てお年寄りの一人が、
「兄ちゃん調子悪そうやのう」
 だからね、調子悪いから見てもらうんですよ、とも言うことなく診察室へ。お年寄りに悪気はないんです。当然の権利を当然に行使しているだけですから。でも、ホンマに健康なら病院は縁遠いところですよね。

 まあ、せいぜい大病患わないように注意せんとね……。花粉症ばかりはどうにもならないんですが。


作品名:ihatov88の徒然日記 作家名:八馬八朔