ihatov88の徒然日記
8 ルービック・キューブ 4.24
自作の宣伝になってしまうのですが、拙作『光と陰、そして立方体』の中にルービック・キューブが出てきます。今から30数年前に爆発的ヒットとなった科学的オモチャで、今でも競技会が開かれるほど一定の人気があります。
かく言う私も小学校低学年くらいの時に出会い、挑戦したわけですが悲しいかなそんな知恵も周囲に完成できる人もおらず、けっこう頑張ってみたのですが結局あのカラフルな立方体はブームの向こう、正しくは押し入れの隅の方で永い眠りに就いてしまいました。
それから時代は21世紀になった頃、実家が引っ越すということで手伝いに帰ったところ、遺跡から出てきたかのように発掘された「それ」、ホコリをかぶっているものの、じゅうぶん使える状態で永い眠りから覚めたのです。
あれからおよそ20年「それ」はそのままでも、こっちは大人になったので理解という武器を得て、さらに時代は充実し攻略本まであるのですよ。ちなみに拙作の文中にある完成手順が一番ポピュラーな『ツクダ式』といわれるものです。
せっかく発掘したのだから元の姿に戻してやりたい。そう思った私は攻略本片手に悪戦苦闘、時間はかかってしまいましたが、何とか完成できたのです。その達成感たるや……、と言ってる自体が小市民。別にいいじゃん小市民。あれを頭で噛み砕いて完成させる頭を持つ人は確かにすごいと思います。
このルービック・キューブが縁で知り合いになった方から構造や完成までのプロセスを聞いたことがありましたが、もはや聞いたことのない言語を聞いたほどでしたとだけ言っておきましょうか。
これまた脱線してしまいました。それでは本題入ります――。
* * *
先ほども申し上げた私は小市民。人が中々できないことができると自慢したくなります。ですが、
「オレ様はすごいだろう?」
とエラそうに言うのは好きではありません。どちらかと言えば
「うわぁ、スゴいですねぇ」
と言われたい。
そこでいけないイタズラを思い付いた私はキューブが完成したところと、バラバラな時の写真を二枚、携帯電話で撮影して職場の部下に見せてちょっと意地悪な実験をすることにしたのです。
まずは部下A、休憩室で雑談している時に私は携帯電話を取り出した。
「ちょっとA君、これを見てくれん?」
「何ですか?」興味深く私の携帯を覗く部下A
「これがやね……」見せたのはバラバラのキューブの画像、
「こうしたら、こうなるねん」
次に見せたのは完成体、プラス自分のドヤ顔。
「うわぁ、スッゴいッスねぇ」
「そやろ?そやろ?」
彼は確かに素直で勤務態度も真面目だ。お約束の気持ちいいリアクションをありがとう。
続いて部下B、彼女にもA君と同じように写真を見せた。
「どうよ?コレ」
Bさんはこれを見てすぐさま私の腕を叩いたのだ。
「コレってどうせバラして組み立てたんでしょう?」
「ななな、何てことを。バラしてへんで」部下Bの言葉に反論する私、
「じゃあ、シール貼り替えたとか……」
彼女は日頃から警戒心が高い。だけど上司のいうことは疑わないで欲しいな。間違いじゃないけど。よし、次。
最後に部下C。三人の部下の中では一番先輩で、私との付き合いも長い。
時間がないので部下A、Bも一緒にいるところで二枚の写真を見せた。
「これが」一枚目
「こうなるねん」二枚目の完成体。
「はぁ、はいはい……」
C君はしたり顔で私の方を見て問い掛けた。
「この写真……、どっちを先に撮りましたか?」
「正解!アンタは鋭いッ!」
私がサーブした実験の意図を見抜いたC君に拍手をすると、横で
「騙されましたぁ」とシマッタ顔のA君
「疑ってすみませーん」と同じくシマッタ顔のBさん。
ここで種明かし。本当は完成できるんですよ、でもこう説明した方が面白いと思っただけなのねんと部下たちにいうと一同納得。そして部下たちの腹の底(大袈裟かな?)が少し見えたのは一石二鳥でしたね。
そんなC君には3ポイントをあげよう。何ポイントで何ができるか全く基準ないけど。まぁ、そんな感じで職場は冗談や笑いが飛び交う雰囲気を上司として作ろうと考えております。もちろん、仕事はちゃんとしてもらわないとアカンねんけど――。
作品名:ihatov88の徒然日記 作家名:八馬八朔