ihatov88の徒然日記
14 ノスタル日記、その一 5.23
趣向を変えて、ちょっと昔の話。え?あんまり変わってないって?まあいいじゃないですか。思えば私もいい年になったもので、昔の話ができるようになったもんだ――。
* * *
家族でお出かけ、準備をするのは親の仕事。私は車、ヨメはお弁当、どこにでもある風景です。そしてウチの子どもたち、手伝ってと言っても返事はするけど動かない。なら自分達でしたほうが速いので結局ほったらかし。まさに「お子様」これは愚痴。
ウチの子供たちがテレビを見ているのです。待ってる間テレビ見てたらおとなしいし、ケンカしないので結局易きに流れてしまいます。
「さあ、行くで」
と子どもらに外へ出るよう促すと
「まだテレビ終わってないねん」妹
「録画したらええやん」姉
「もう撮ってるよ、これ追っかけ再生やから」妹
ちょっと待ったぁ!
テレビの時間をあてにしてました。これって録画をしたものを追っかけ再生してるってことは……、実際の時間は10分くらい先ではないか。
「大変だ、遅刻するよ、遅刻!」
カラダの時計はさらに早回し、子どもらの尻を叩いてさっさと用意するよう急かすと、
「まだ自分の用意が出来てない」
……困ったもんです。まあテレビに子守りを任せた親の責任でもあるので呆れるだけでしたが、この問題のキーワードにビデオ(録画)というものがあります。
* * *
21世紀の世の中録画の技術は便利になりましたよね。簡単に録画ができて再生も編集も簡単にできます。私がムスメたちの年の頃、つまり小学生のころ、テレビはありました。だけどビデオはなく、見たいテレビは新聞で事前にチェックしたものでした。それにチャンネル権争いもあり、裏番組がかぶるとケンカになります。ところが現代ではそんな問題もありません。最近のレコーダーは複数の番組を同時に撮れてしまいます。
それから、時代は平成に入るちょっと前でしょうか。ウチにもようやくビデオが導入されました、テープをつかうやつです。録画ができることは素晴らしい機能ですが、今の媒体と違って見たいシーンはテープを巻いて探さなければならないのです。音楽のテープも同じですね、当時は「頭出し」機能とかありましたが、実際にテープを巻くのですぐには出ないんですよね。それでもリアルタイムでなくても見たかった番組があとでも見られるというのは画期的なものだと思った訳です。
私が子どものころは習い事で見たいテレビが見られず学校での話題に入れないこともよくありました。ネズミ嫌いのタヌキみたいなネコやおっちょこちょいな世田谷のマダムがうらめしいと思った時期があったものでした。
それが今の子どもたちにはそういう感情がないのです。おとーちゃんの思い出話にある少年時代の心の機微もたった一言で片付けられるのです。
「録画して、あとで見るから」
悪意など全く無い純粋な子どもの言葉――。大人にはちょっと捉え方が違うようです。
* * *
とビデオ録画、確かに便利です。空いた時間に録画したものを見れば良いのですね。今でなくても良いわけですから時間管理はとても合理化できます。これは現代を生きる子どもの考え。
しかし、私はここに落とし穴があるような気がしたのです。
昔は番組の時間に人が予定を合わせていたのです。テレビを見たいがために宿題さっさと済ませて、お風呂入り、ご飯食べて、明日の学校の準備して……とテレビのためにその他の段取りをこなしていました。だってテレビは待ってくれないんですから。
ところが今の子どもは(自分の子どもですよ)、人のペースで時間管理をするのがいささか上手ではないように見えるのです。今の今でなくても良い番組を見るには見るけど、不要なシーンやCMをスキップするいわゆる流し見状態になり、中には最後まで見ないなんてことになります。
後でもできる、だから今でなくてもいいと解釈してしまいテレビの番組に限らずにその他の諸作業もそんな姿勢になってしまうようです。最終的にゴールにたどり着けば良いわけですから、子どもたちのすることが間違っているとは考えませんが、大人の目から見ればどれも同時進行できて便利ではあるがメリハリが無いように見えてしまうのですね。
そこで思うのです。テレビって、リアルタイムで見るから面白いのではないかと、コマーシャルも含めて。スポーツの試合なんかはビデオで見ると面白味が減るように思います、結果がまだ分からないから面白いんでしょうね。だから好んでライブを見に行く方も多くいらっしゃるのかな、と思います。
相手に時間を合わす。これは人付き合いでも当てはまるのではないでしょうか?最近は人と接するのが苦手な方多いですから――。
最後に、遅れて用意ができたムスメたちに言ってやりました。
「テレビ消した?」
「うん」よく見たらビデオチャンネルになっていてテレビの電源が落ちてない。
「画面が『ヒデオ』になってるで」
「それ、前言うたネタやん」
画面の右上に小さく『ビデオ』。以前『ヒデオ』になってるよと言うと本気になって画面を見たムスメでしたが、どうやら子どもも学習するようです。
続く
作品名:ihatov88の徒然日記 作家名:八馬八朔