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ihatov88の徒然日記

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56宗教上の理由 1.28



 入社間もない頃の話です。どこの会社でもそうでしょうが、入社すると社員として洗脳教育を受けます。ワタクシの場合は、研修施設に無理矢理入寮させられ隔離されたところでさんざん洗脳させられました。まあ今となっては思い出話ですが、同期の面々とは腐れ縁となり今でも会えばウダウダするし、出先で会うとなぜだか嬉しくなります。

 先日同期の一人がワタクシの部所に出張で遠路はるばるやって来た時のことです。
「おう、久しぶりやのう」
ワタクシのおでこを見て挨拶。視線がちょっと上やないかい、キミ!気にして無いけど(強がり)
「そういうお前も大きなったなあ……、何入ってんの?ココ」
すかさず同期のお腹をさすってやる。勤続年数はもちろん同じなのでお互いエエ年です。
「昔は同じ釜のメシ食ってた間柄やんか」
「懐かしいのう」と会えば昔話に花が咲きますが、共通する意見としましては

   「楽しかった?でも、あの時には戻りたくない」

 やっぱりついこないだまで自由な学生だった身分があそこで修行僧のような生活を強いられたわけですから。まあ、あの時があったから今の自分があるんだと会社にはフォローしておこう。

 施設での話です。同じ釜のメシを食べてました。寮では食事つきでした、なのでそんな言葉が言えます。
 ところがここの食事、悪くないのですが基本的に薄味嗜好の関西人である私には少々濃いのです。そりゃ日本の方々から新入社員が集まってくるので味付けを決めることは出来ません。逆に濃いもの好きの人はこれからさらに調味料をドバドバといきます。同じ日本でも味覚が微妙に違うのだなと思ったのです。
 研修所では毎日サラダが出ました。ただでさえ濃いめなので、この頃から野菜は何もつけずに食べるようになり現在に至っています。野菜って案外生で食べるのが一番美味しいですよ、個人論。
 そこで目の前の同期はサラダにかけるんですよ、マヨネーズ。それも野菜見えなくなるくらい――。
「お前、何もつけずに食べるんか?」
「おうよ。そういうお前も何食ってるねん、それやったら『マヨネーズにサラダ』やんか」
そのマヨネーズ漬けの結果は現在きっちり現れているのは敢えて無視して、そういや彼はその時、こう言ったのです。
「何で何もつけんの?」
 あの時とっさに答えちゃったんですよね。勢いだけで言ってしまった回答、ところがこれが今の自分の重要な決まり毎になったのです。

「そりゃあマヨネーズつけないのは『宗教上の理由』やがな?」

 同じテーブルを囲んでいた同期6人大爆笑、受けてしまうと話広げてしまうのが関西人のいけないくクセ。勢いに乗って言っちまったんです。
「そうさ、宗教上の理由よ。オイラの宗教には3大戒律ってのがあって……

   太陽の上っている間は酒を飲まない
   タバコは吸わない 、そして
   マヨネーズは食べない

だ。宿題忘れてもこれは忘れないでくれ」

 以後研修所の部屋では『宗教上の理由』は流行語になりました。何でもかんでも宗教上の理由で片付けられ「夜には勉強しない」って言う同期もいたっけ……。
 とにかく、勢いだけで決めた三大戒律、なぜか今でも守ってます。ほら、マヨネーズってかけると元の食材より味が勝ってしまうじゃないですか……。

「そういやお前はあの時何を『宗教上の理由』にしたっけ?」
と聞いてやると大きな体を揺らしながら同期は答えたんです。
「後悔せんように食べたいものを食べることでんがな」
 彼も戒律は守っているようです――。

作品名:ihatov88の徒然日記 作家名:八馬八朔