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開けてはいけない

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「俺はリビングのドアを開けてみようとして、少し躊躇った。なにか、いやなものを見てしまいそうで、このドアを開けてはいけないんじゃないかって思ったんだ。」
「なんだか、おまえらしくないな。」
「そうなんだ。だけど、頭の中ではこのドアを開けない方がいいって思うんだけれど、体がドアノブを引いてしまいそうになるんだ。なんて言うんだろ、怖いもの見たさの好奇心とでも言うのかな。俺はしばらくドアの前で葛藤していたんだけど、ついに好奇心に負けてドアを開けてしまった。」
「どうだったんだ?」
「なにもいなかった。リビングの隅から隅まで見てみたが、なにもいなかったんだ。」
「一大決心をしてドアを開けた割には、拍子抜けだな。」
「ああ、そのときは俺もそう思った。」
「違ったのか? 何かあったのか。」
「昨夜のことだ。また2時半に目が覚めた。」
「音が聞こえたのか。」
「ああ。今度は、廊下から聞こえて来た。寝室のすぐそばから。」
俺は思わず受話器を握りしめた。
「ドアを開けるたびに、ドアを越えて少しずつ近づいて来ているってことか。」
「ああ。さすがに、今度はドアを開けてみようとは思わなかった。」
「なんか、やばいんじゃないか。いったんホテルにでも移ったらどうだ?」
「まさか。怪奇現象だとか、心霊現象なんてものがあるわけない。なにか、音の原因があるはずだ。」
「確かにそうだとは思う。例えば、エアコンを切ったせいで、マンションの建材が伸縮しているとか、排水管かなにかの振動が部屋に伝わってるとか。」
「それ、いわゆるラップ音とかポルターガイスト現象の一般的な原因だよな。」
「ああ、そうさ。似たようなもんだろ。」
「うーん、でもこれは少し音の感じが違うかな。」
「今夜は大丈夫か。今夜も音が聞こえても、原因が分かるまではドアを開けない方がいいんじゃないか。」
「わかってるって。大丈夫だよ。じゃ、なにかわかったらまた電話するよ。ちょっと面白い体験かも知れないし。」
「無理するなよ。」
俺がそう言うと、加治からの電話は途切れた。

作品名:開けてはいけない 作家名:sirius2014