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開けてはいけない

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「アルコールのせいで血圧でも上がってたんじゃないか。」
加治は俺の言葉に反応せずに、話を続けた。
「次の日、また真夜中に目が覚めた。やっぱり2時半頃だ。そしたら、また同じ音が聞こえるんだ。さすがに不審に思って、寝室から出てみた。」
加治は、俺が住んでいるマンションとよく似た間取りの1LDKのマンションに住んでいた。違うのは、俺の部屋は1階で加治の部屋が5階ということだった。加治も俺も玄関脇の洋間を寝室にして、その奥にLDKという間取りだった。
「俺は寝室のドアを開けて廊下に出てみた。音はリビングの方から聴こえて来る。リビングのドアを開けてリビングに入ると、音が大きくなった。でもリビングの中じゃない。その音がベランダから聞こえてくるのがわかった。俺はリビングからサッシのガラス越しにベランダを覗いてみた。」
「何かいたのか。」
「いや、暗くてよく判らなかった。俺はそのまま寝室に戻って、ベッドに潜りこんだ。」
「ふーん・・・」
「だけど、火曜日の夜もまた2時半頃に目が覚めた。やっぱりベランダから音が聞こえる。俺は犬か猫でもいるんじゃないかと思って、思い切ってベランダのサッシを開けてみた。」
「どうだった?」
「なにもいなかった。」
「おまえの部屋は5階だから、外から何かが入り込むことは無いだろ。怪奇現象ってやつか。」
俺は重たい会話の雰囲気を和らげようと、軽い調子でつっこんでみた。でも、加治は俺のつっこみをあっさりとスルーした。
「その夜はそのまま寝たんだけれど、水曜日の夜、やっぱり2時半に目が覚めた。」
「また音が聞こえたのか。」
「ああ。だけど今度は音が少し大きくなっていた。寝室から廊下に出てみると、音はベランダじゃなくてリビングから聞こえてた。」
「その音って、どんな感じ?」
「ずりっ、ずりっ、て感じで、何か重いものを引きずってる感じかな。」
「うーん、これはちょっと怖いかも。で、どうした?」
作品名:開けてはいけない 作家名:sirius2014