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開けてはいけない

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その画像は朝の駅のホームを撮影した画像だった。今しも駅に電車が到着して、人が乗り降りしていることころだ。だが、電車の出入り口の脇のホームの端から、誰かの手が覗いている。
「どうだ、題して、『ラッシュアワーの駅で、ホームに這い上がろうとする何者かの手』ってところだな。」
俺はその画像を少しだけ眺めただけで、タネが分かってしまった。
「この手、よく見ると爪がないぜ。全体的に立体感が無いし。ただの白い手袋だろ。」
「当たり。」
「こんな写真見て、霊だとかなんとか騒ぐやつ、いるのか?」
「これがいるんだな。この画像は以前、あるテレビ番組で紹介された、れっきとした心霊写真だ。しかも、同じ番組に出演してた自称霊能力者が言うには、ここで昔飛び込み自殺した人の霊だそうだ。俺が置いた手袋なのにな。」
加治は大笑いした。
「ホントに、心霊写真だとか心霊スポットだとか、そんなもんあるわけないのに。実際、そんなものが無いってことを一番よく知ってるのは、それを飯のタネにしている連中さ。」
「確かに。」
「幽霊なんてもんがいるなら、一度でいいからお目にかかってみたいもんだぜ。ばかばかしい。」
俺は少し加治をからかってみたくなった。
「そう言えば、幽霊ってのは、それを信じないでばかにするやつのところに現れるって、聞いたことがあるぜ。」
「そうか、じゃ、俺がばかにすれば、俺のところに現れるんだな。」
「おいおい、おまえ、そんなこと本気で信じてるのか。」
「そんなわきゃないだろ。」
それからも俺と加治はさんざん霊とか妖怪だとかをばかにして盛り上がった。いつのも通りだった。
やがて、俺と加治はけっこう酔っぱらって居酒屋を出た。
それじゃまたな、と言って加治と別れた俺は、帰宅の途に着いた。

作品名:開けてはいけない 作家名:sirius2014