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開けてはいけない

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加治からと思った電話は、警察からだった。
俺に電話してきた刑事から聞いた話は、とても信じられない内容だった。
今週、月曜から加治は出社しなかった。無断欠勤だ。これは、俺も加治の勤務先に電話したことで知っていた。
無断欠勤が一週間に及ぶにいたって、加治の勤務先の会社も不審に思い、今日の夕方、加治の同僚が加治の家を訪れた。
すると、新聞受けに大量の新聞が溜まり、インターフォンで読んでも応答がない。ここまでは、俺のときと同じだった。だが、加治の同僚は会社から来た手前、もう一歩踏み込んだ対応をした。加治の同僚はマンションの管理人と交渉して、加治の部屋のドアを開けてもらったのだ。
加治の同僚と管理人は、寝室の中で倒れている加治を発見した。加治は既に冷たくなっていた。
管理人からの通報で警察が駆け付け、不審死ということで直ちに室内の捜索が行われた。
外部から侵入した形跡はないが、加治が死んでいた寝室のドアの外側には、下から50センチほどの位置に、無数の細かい引っ掻き傷が付いていたそうだ。下から50センチというと、その刑事の表現によれば、ちょうど床にうつ伏せになって腕を伸ばした程度の高さだそうだ。ドアの内側であれば、加治が苦し紛れに引っ掻いたのかも知れないが、外側なのでそれはあり得ない。その刑事は、この点を気にかけていた。死因はこれからの司法解剖の結果を待たなければならないということだったが、死因によっては、本格的な捜査活動に入るとのことだった。
なぜ警察から俺の家に電話があったかと言うと、加治の固定電話の最後の発信履歴が、俺宛の電話だったからだ。それは、土曜日の深夜3時。ちょうど怯えた加治から電話があった時間だった。
しかし、俺が最後に加治から電話を受けたのは、土曜日の朝7時のはずだった。しかし、その時間には発信履歴はなかったそうだ。
作品名:開けてはいけない 作家名:sirius2014