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開けてはいけない

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結局、俺はその日、加治の家には行かなかった。
気を取り直して加治に電話してみても、加治への電話は二度と繋がらなかった。常に話し中で、受話器が外れているのかも知れない。携帯電話も繋がらなかった。電源が落ちているか、電波の届かない所にいるのか、どちらかだろう。
俺は加治の勤務先に電話してみた。加治は月曜から無断欠勤しているとのことだった。
結局、俺が加治のマンションを訪れたのは、水曜日の夜だった。
加治の部屋のドアの新聞受けには、いくつもの新聞が乱雑に溜まっていた。溜まっている新聞の日付を見てみると、土曜日の分からだった。土曜日の朝から、加治は新聞を取ることができない状態になっているということを意味していた。
インターフォンのボタンを押し続けても、誰も応えない。
俺は諦めて加治のマンションを後にした。俺は加治が出かけているのだろうと思った。いや、そう思いたかった。
しかし、加治に会えなかったことで、奇妙な安堵感を持っていた。なぜなら俺は、加治の部屋で、何か、とてもいやものを見てしまいそうな予感がしていたからだ。
そしてその予感が正しかったことが分かったのは、金曜日の夜だった。
金曜日の夜7時頃、自宅の固定電話が鳴った。
俺は固定電話のベルの音に驚き、思わず飲んでいたビールの缶を取り落した。慌ててカーペットにビールをまき散らしながら転がるビール缶を拾い上げると、俺は受話器を取った。
作品名:開けてはいけない 作家名:sirius2014