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開けてはいけない

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「そんなもの真に受けるやつは、アホばかりさ。俺がそんなアホに見えたか。くだらない。」
「でもゆうべの慌てようは、けっこう信じてる感じだったぜ。」
「そんなはずないだろ。俺を世間の間抜けどもと一緒にするなよ。」
「ホントにそう思ってるか?」
「あたりまえだろ。そもそも、霊だのなんだのって、高等教育を受けた人間が口にする言葉じゃないだろ。ばかじゃねえのか、みんな。くだらないことに騒ぎやがって。」
「ハハハ、たいした自信だな。だけどな、そんなことばっかり言ってると・・・」
加治はそこで一呼吸置いた。
俺はふと、その加治の声と話し方に違和感を感じた。その違和感は俺の頭の中で小さな疑念となって、水に垂らした墨汁のように、急速に俺の頭の中に広がって行く。
俺が今話している相手は誰だ? これは本当に加治なのか?
俺は頭の中の疑念に我慢ができなくなりそうだった。俺は受話器の向こうの沈黙を埋めるために聞き返した。
「そんなことばっかり言ってると、なんだって言うんだ?」
そのとき、受話器の向こうの空気が歪むのを感じた。なにか、禍々しい空気が受話器の向こうに満ちて行く。受話器の向こうの空間がみるみるうちに歪み、捩れて行く。そして、その歪みが電話線を通してこちらに伝わって来る。受話器を握りしめる俺の掌が、いつの間にか汗まみれになっている。
受話器の向こうで、歪んだ加治が捩れた声で言った。それは、曇りガラスか黒板を引っ掻くような、ひどく神経に障る声だった。
「そんなことばっかり言ってると・・・次はおまえのところに行くよ・・・」
俺の全身の毛が逆立った。
霧の向こうから、何か異形のものがいきなりにゅっと顔をのぞかせたような、そんな感覚がした。
受話器の向こうにいるのは、誰だ?
そこで電話は唐突に切れた。
俺はリダイヤルする気も失せて、受話器を握りしめたままその場に茫然と立ち尽くした。

作品名:開けてはいけない 作家名:sirius2014