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開けてはいけない

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翌日の朝7時。土曜日で会社が休みだった俺は、加治の家に行ってみることにした。
どうみても昨夜の加治は普通じゃなかった。あの後、加治がどうなったのか、気がかりだった。
身支度を終えて家を出ようとしたとき、固定電話が鳴った。
俺は飛びつくように受話器を取った。
「もしもしっ!」
俺が受話器に向かって叫ぶと、受話器の向こうからいつもの加治の声が聞こえて来た。
「なんだよ、大声出して。さては、夜中の俺の演技を真に受けたのか?」
「加治っ、どうしたんだよ、さっきは。大丈夫かよ、いったい何があったんだ!。」
「おいおい、焦るなよ、おまえらしくもない。」
「演技って、なんだよ。全部ウソだったのか。」
「ごめんごめん、おまえがこんなに信じ込むとは思わなかったんだ。実は今、ある出版社が『本当にあった怖い話』ってのを募集してるんだ。だから、それに応募してみようと思って、怖い話を考えてみたんだ。」
「なんだよ、人騒がせなやつめ。本気で心配したじゃないか。今、おまえの家に行こうとしてたんだぞ。」
「俺の演技、そんなに真に迫ってたか。よし、この話はいけるな。すまんな、驚かせて。」
俺は加治の作り話に取り乱した自分が恥ずかしくなり始めていた。ふだん、あんなに怪奇現象とか心霊現象とかばかにしていたのに。同時に、自分を騙した加治に本気で腹を立て始めていた。
「まあ、あんなこと、実際にあるわけないもんな。心霊現象だとか、超常現象だとか、そんなもんあるはずないし。」
「その通りさ。」
作品名:開けてはいけない 作家名:sirius2014