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みやこたまち
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novelistID. 50004
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アバンチュール×フリーマーケット ~帰省からの変奏

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 昨日までの自分は死んだ。太陽は日々再生を繰り返している。私は私では無い。なぜならば私を裏書するのは私以外のモノであり、私にとってそれは、会社の人々であり、タイムカードであり、社員番号だったが、それは、会社員としての私であってそれが私の全存在ではなかったはずで、今、おそらく会社には向かわず私を知るモノが何一つ無い状況下にあってなお、私が、妻を失った私であるという確証とは、つまり私の記憶のみだ。記憶だと?そんなものは妄想だ。夢だ。そもそも私に妻などいたのだろうか。偽記憶。そう、それは夢でしかなかったのだ。現実には存在しないもの。そう。今現在、ここに存在していないものが、実は存在しているなどという世迷言を信じるのはもうよそう。私が私でいられる理由は、この電車に乗ったという記憶を持つ、私のこの記憶を確からしいと信じるでもなく受け入れている私が、今現在、電車に乗ったという行為の当然の帰結として電車に乗っているからに他ならない。すなわち、私とは常に遡りつつ検証をしていかねば確定不能な根無し草のようなものなのだ。そこで、私はこの検証を中止してみることにする。すると、あの部屋、あの冷蔵庫、あのちりめんじゃこ、あの、写真あの銀行通帳、あの冷蔵庫の中のラップをかけた皿、あの時計、あの服、あの本、こうした限りなく思い出される「あの」ものを所有していた私は、消滅するのだろう。妻が消失したのと同じように。失敗だ。とりあえず次の駅で電車を降りようと決めた私は、どうしようもなく月給24万円で、家賃7万3千円の部屋に住むのサラリーマンだった。