Wish プロローグ4
「あ…あの、パーティを組むって、ヒナちゃんとかえでさんはこれからどこかのパーティへ行くのですか?」
「ううん違うよ~。パーティを組むっていうのは、ゲームの中で一緒に行動するってことなんだよ~」
「へぇ、そうなんですか~。初めて知りました」
「まぁ、大抵の人はあまり知らないと思うけどな」
「じゃあさ、ミナタンも一緒にやってみる?何だか興味がありそうだし~。あたし的には大歓迎だよ☆」
「いいんですか?!では…」
「ミナ…それは止めておいた方がいい。かえでと組んだが最後、寝られるのは二日後…いや三日後かもしれないぞ」
俺は、ミナに耳打ちで忠告してやる。
「………。で…では、また、機会がある時にでもお願いします」
ミナ、それが懸命な判断だ。
「もう、お兄ちゃんとかえちゃんはホントしょーがないんだから」
「本当だね。あははは♪」
またしても、かえでと一緒にされてしまった……いったい、俺って…。
「ところで、ミナ、明日からどうするんだ?」
「そうですね…。取り敢えず家の大掃除ですね。何年も使っていなかったので大変そうですね」
「俺も手伝おうか?」
「いえ、大丈夫ですよ。明日には、お手伝いさんが来てくれますから」
「そうなのか。まぁ、手伝いが必要だったら言ってくれ!すぐに手伝いに行ってやるからな」
「はい、ありがとうございます」
「へぇ~珍しい。あのぐーたらお兄ちゃんが自分からやるって言うなんて…でもお兄ちゃん、明日から学校でしょ?まさか初日から休むんじゃ……」
「あはは~。ハルちゃんなら本当に休むかもね~あはは」
「いや……明日学校だったこと自体忘れてた…」
(………)
全世界が停止した。
「もう~お兄ちゃん!」 「もう~ハルちゃんったら~!」
「春斗……大丈夫?」
「って、ちょっと待てい!冬姫たちはしょーがないとしてもかえでに言われるのは納得いかねーッ!」
「まぁまぁハルちゃん。あ!そうだ~ねぇねぇ~ミナちゃんは、学校はどうするのかな?」
「もちろん行きますよ。虹ヶ坂学園に通うつもりです」
「何だ、俺たちと同じ学校じゃないか」
「はい。私、おじいちゃん…学園長とお知り合いなので、それでこの学園に。それにヒナちゃんも在籍してることも聞いてましたし」
「そうなんだ」
「でも、これでみんな一緒に学校行けるね~☆あはは~楽しみだなぁ~☆」
「はい、私も楽しみです」
「いいないいな~。ユキちゃんたち…。ボクも一緒に学校行きたいよ~」
「別に一緒に行けるだろ」
「違うの~一緒に学校でお勉強したり、一緒にお昼ごはん食べたりしたいんだよ~」
「あぁ、それは明日香には無理だな。まぁ、来年俺たちの学園に通うんだからそれまで我慢だな」
「うぅぅ…。残念だよ~」
明日香は、がっくりと肩をおとしていた。
「明日香、諦めるにはまだ早いよ~!」
「え?」
かえでが、自信たっぷりの満面の笑みで答えた。
…何だろうね。このいやな予感は…。
「一応聞くが、それはどんな方法だ?」
「簡単だよ☆書類を書き換えるとか、新入生を装って堂々と入学するとか、あとあと…」
目を満天の星空のようにキラキラと光り輝かせて興奮覚めあがらない様子でテンションがハイになるかえで。
しかし、そんなかえでに俺は言ってやらねばいかん。
…こいつの幼馴染兼いち保護者として。
「なぁ、かえで。それは、何ていうゲームの話だ?」
「………」
途端ににんまり笑顔でフリーズし黙り込むかえで。
「んなこと現実にできるわけないだろがッ!すぐにバレるわッ!いいか、そういうことはゲームの中だけにしておけ!リアル禁止ッ!」
「ん~いい考えだと思ったのにな~☆二次元バンザーイ」
全然いい考えじゃねーよ。
…そろそろ戻ってこい。
「うーん、なるほど♪かえちゃん、それナイスアイデアだよ~♪」
「ってこら、な~にがナイスアイデアだ!このリトルシスターがッ!!」
「リトルじゃないもん!いいじゃん。バレなければ~」
「そういう問題じゃないの!こういうことはしちゃいけないの!いけないことなの!明日香、アンダースタン?」
「むう~。だってさボクも一緒にミナちゃんと学校行きたかったんだもん」
「もう~子供みたいに駄々こねない。大きくなれないぞ?」
「むう~子供じゃないもん。…わかったよ。我慢するよ」
「えらいぞ、明日香。さすがは俺の妹だ」
俺は、明日香の頭をくしゃくしゃっと撫でてやった。
「むぅ~。お兄ちゃんまだ子供扱いする~。ボクだってもう立派な大人のレディーなんだよ~」
だから…そういうトコが子供なんだよ…。
「ふふふ♪本当に仲がいいんですね♪」
「うん♪いつもすっごく仲良しさんだよ~」
「いいですね♪羨ましいです♪」
「そうだね~♪」
「でも、それはただ単に春斗がシスコンっていうだけでは?」
「かえで、聞こえてるぞ。お前には後でげんこつハンバーグをくれてやるから覚悟しとけよ」
というか、明日香がブラコンっていう選択肢はないのか?
「さて、あたしはそろそろお暇しましょうかね。じゃみんなじゃーねー&おやすみんみん~いい夢みろよ☆」
かえでは、ビシッとグッジョブするとそそくさと退散していった。
「ったく、ホントしょうがない奴だな」
「あはは♪まぁ、かえちゃんだからね~。しょ~がないよ~あはは♪」
あぁ…とうとう冬姫まで。
「あの~ヒナちゃん、ちょっと聞いてもいいですか?」
頬を赤らめもじもじしながら控えめにひょこっとやってきて俺に話しかけてくるミナ。
「ん?何だ、ミナ?」
「シスコンとは何ですか?」
(………)
「いいかミナ。世の中には知っていいことと悪いことがある。だから、ミナよ~く気をつけるんだぞ」
「??え…あ…はい?わかりました」
ミナは、何のことだかさっぱりわかっていないようだった。
いいんだ。それで。ミナには、知らなくてもいいことが世の中にはあるんだ。
まぁ、それはもういいとして…。
「もう夜遅いしそろそろお開きにするか」
「そうだね~何だかんだでもう結構いい時間だし」
「でも、それだけ楽しかったっていうことだよね~♪時間を忘れるくらい私、楽しかったもん」
「はい、私もそう思います♪私も本当に楽しかったです!みなさん、今日は本当に私のためにこんなに楽しい会を開いてくださって、本当にありがとうございました」
「いいって~いいって~♪だってミナちゃんとお友達になれたんだもん♪おつりが返ってくるくらいボクは嬉しいよ」
「そうそう♪私たちは、もうお友達なんだから気にしない~気にしない♪」
「まっそういうことだミナ。改めて言うのはなんだけど、これからよろしくな。それと、おかえりミナ」
「は…はい!ただいま…ヒナちゃん」
ミナの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
そして、ミナの歓迎会はこれでお開きになったのだった。
作品名:Wish プロローグ4 作家名:秋月かのん