Wish プロローグ4
歓迎会がお開きになって、ヒナちゃんの厚意で私は、ヒナちゃんの家に泊まらせてもらうことになった。部屋はヒナちゃんの隣の部屋を貸してもらうことになったけど……やっぱり、ヒナちゃんと同じ部屋がよかったな。
昔みたいに、ヒナちゃんの隣で一緒に寝たいな。
あの暖かいヒナちゃんの腕の中で…。
そうだ!後でこっそりヒナちゃんの部屋に行っちゃおう♪
それで、ヒナちゃんの布団の中にこっそり潜り込んじゃおっと♪
ふふふ♪ヒナちゃん、朝起きたらびっくりするかな~ふふふ♪
私は、その時のヒナちゃんの顔を想像すると、今から楽しみだ。
それに、嬉しかった。
「私…やっと帰ってこれたんだなぁ…ここに」
あれから6年…。長かったな…。
正直、こっちに帰ってきたのはいいものも、ヒナちゃんには会いたい。
でも、どんな顔して会ったらいいかと悩んだ。
あの時、突然ヒナちゃんの前からいなくなった私だから…。
それに、もうヒナちゃんは、私のことなんか覚えてなくて、ヒナちゃんも昔とは変わってしまって私の知らない手の届かない人になってしまったのではないか。
そう考えると、とても悲しくて胸が押し潰されそうなくらい苦しくなった。
でも、ヒナちゃんは、私のことを忘れてなんかいなかった。ちゃんと覚えていてくれた。
昔と変わらないヒナちゃんでいてくれた。
やさしくて、あったかくて…。
私が泣いていると昔みたいに頭をやさしく撫でてくれた。
本当に嬉しかった。
私は、この幸せな気持ちとこみ上げてくる喜びを抑えきれなくて笑みを浮かべていた。
そして、口に出して言ったのかはわからないが、私はこの時こう思っていた。
『幸せだなぁ~』
こうして、この日の夜はゆっくりと更けていくのだった。
「…フフフ」
彼女はそのある1軒の家を不敵な笑みを浮かべながらじっと見据えている。
そう。ただずっと心の底から凍ってしまうかのような冷徹な眼差しでじっと見つめる。
「まさか、こんな辺鄙なトコにやってきているとはな。何もないこの偏狭の土地で身を隠そうとは…フフフ。さすがの私も驚くばかりだよ」
昂ぶる感情からなのか笑いを堪えきれず再びクスクスと不敵に笑い出す。
「しかし、これで抜けかけていたパズルのピースが今この時1つのモノとして出来上がるのだ。例え、それが運命の歯車を大きく揺るがそうとも。…フフフ」
まるで、これからパーティ前の余興を楽しむかのように。
まるで、探し求める何かを待ち望むかのように…。
これからの運命を揺るがし、この地を脅かす破滅への序章の音を奏でるかのように。
「…フフフ。見つけたぞ。アミーナ・ノヴァ」
そして、彼女はゆっくりと登る朝日を背に大きく高笑いをするのだった。
次回へ続く
作品名:Wish プロローグ4 作家名:秋月かのん