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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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Wish プロローグ3

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「いやまぁ具体的にはわからんが、何ていうかいつもならここでっていう何かがないような気がしてな」

「そうだな。俺から言わせてもらうと、こういう話をしていると過敏に反応する奴がいたっていうことだな」

「そうッ!それだぁッ!よく気づいたな」

「当然だ。俺を誰だと思っているんだ。俺はかつてこの街のだな…」

「それはどうでもいいが、どうしてもそいつが思い出せん」

「おいおい…。お前…それはホントの本気で言ってるのか?」

「あぁ」

「………」

凍弥は、呆れた顔をして、哀れむような目で俺を見ていた。

「な…何だよ」

「暁…」

暁?…暁…暁……。
………あ、あぁぁぁ~ッ!!!!!

「…あぁッ!そうだ暁ッ!そういえば姉さん!」

「ん~??何、春くん?」

「暁はどうしたんですか?」

「………。あ……」




「あははは♪お兄ちゃんたちひどいね~♪暁さんのこと忘れてたなんて」

「ははは…。私としたことが情けないよ…こんなミスをしちゃうなんて」

「まぁ、気にすることはないですよ。暁の奴だってサボってたんだからさ」

っていうか気絶してた。しかも体育館の裏で。
一体姉さんは暁に何やらせてたのやら…。
暁忘却事件から暁を救い出した俺たちは、夕焼けの空の下を家に向かって歩いていた。

「でーも、春くんと明日香ちゃんホントに今日は手伝ってくれてありがとね」

「別にいいですって。っていうか姉さん、それ言うの2回目ですよ」

「そう?あはは。まぁ、それだけ感謝してるってことだよ♪」

まぁ、姉さんが喜んでくれてるなら別にいいか。
-俺がそう思っていると

(あの野郎~両手に華とはいい度胸じゃねーか)
(きっと二股かけてるのよ)

って聞こえてるんだが。

「ボクは何か楽しそうだから手伝っただけだから全然いいよ~♪それにお兄ちゃんも来るってお姉ちゃん言ってたし♪」

「ん??それはどういうことだ?」

「あ…明日香ちゃん!それは…!」

「むぐ…むぅぅ…」

姉さんは、咄嗟に明日香の口をふさいだ。

「へぇ~それは興味深い話ですね~。姉さん…俺にも詳しく教えてもらえますか~?」

俺は、微笑ましい笑顔を心がけながら、姉さんに問いただした。

「な…何のことかな~?私は、何も知らないよ~」

「ホントですか~?その言葉に嘘偽りはありませんね~?」

「な…ないよ。嘘偽りなんか……たぶん…」

絶対嘘だ。
姉さんの目が泳いでるし、それに、『たぶん』って……。
姉さんは、昔から嘘だけはつかなかったからな。…いや『つけなかった』が正しいか。

この通り姉さんが嘘をついているとき、何か隠し事があるときはまず姉さんの目を見るとすぐわかる。ホントわかりやすいにも程があるってくらい目が泳ぐからな。

まぁこういう場合、餌で姉さんを誘惑して釣るしか方法はあるまい。
あまりやりたくはないが……仕方ない。

「そうですか…それは残念です。せっかく頑張ってる姉さんのために、今度どこかに誘おうと思っていたんですが……考え直そうと思います」

「待って!話す!話すよ!何でも話しちゃうよ~!だから、春くんとのデートだけは取り消さないでぇ~!」

デートじゃないんだけどな。
……まぁいいか。

「えぇ~ずるいよ~お姉ちゃんだけ~。ボクともデートしてよ~お兄ちゃん~。ねぇねぇ~」

そう言って俺の服の裾をまるで姉の誕生日にいいモノをもらってそれを羨ましがって自分も買って欲しいと強請る妹のようにギュウギュウ引っ張っていた。

「デートじゃねぇッ!それにお前には必要ないだろ。一緒に暮らしてるんだから」

「えぇ~必要だよ~。恋人同士ならデートくらいしなきゃ♪」

「誰が恋人同士だッ!俺たちは兄妹同士だろッ!そんなでたらめ言うんじゃありません!」

「むぅぅ~っ!」

明日香は、頬をプクっと膨らませていた。
まったくとんでも発言をするもんだ!誰かに聞かれてたと思うと寿命が半分くらい縮んでたぞ。
俺がそう思っていると、

「は…春くんと明日香ちゃんが恋人同士…春くんと明日香ちゃんが恋人…恋人…」

あぁ~一番聞かれてはマズイ人に……。
なんか姉さんが人生終わったような顔してるし…って泣いてる!?
さらに、

(おい聞いたか?あいつら兄妹なのに恋人同士らしいぞ)
(うそっマジ!?ありえねーだろ普通)
(ふ…不潔だわ!兄と妹で…そんな)

「ぎゃぁぁぁ~ッ!さらにひどい状況にぃぃ~ッ!」

「どうしたの?お兄ちゃん?さっきから騒いで」

「どうしたもこうしたもないッ!明日香がとんでも発言したおかげで俺は今、生命の危機に陥ってるんだ」

「ボクのおかげって…そんな…お兄ちゃん…恥ずかしいよ。そんなに喜んでくれるなんて…ボク…」

手を胸の前で組んでもじもじと照れとはにかむ表情が織り交ぜさせて顔を赤らめる明日香。って違うわッ!

「馬鹿そういう意味じゃなくて。お前のせいで今の混乱を招いているんだ!頼むから俺の誤解を証明してくれ」

「あぁ、そういうことね。証明してもいいけど~その代わり~♪」

「わかったわかった!何でもやってやる!だから早くしてくれ~」

「了解~♪」

明日香は、取り敢えず俺の要望を満面の笑みで呑んでくれた。
はぁ~何だかさらに疲れたぜ…。
何だって今日はこうも疲れるんだ。厄日だな、きっと。

「あはは。何だぁ、あれは嘘だったの。危うく本気にしちゃうところだったよ」

モロ本気でしたでしょーが!姉さんは!

「やれやれ、まぁホント誤解が解けてよかったですよ」

「ところでお兄ちゃん♪さっきの約束忘れちゃダメだよ~♪」

「あぁそのことだが、一体俺に何をしろっていうんだ?」

「決まってるよ~♪デ・ー・トだよ♪」

「……なっ!デ…デデデデデ、デート!?」

「………。却下」

「えぇ~!何で?っていうかもうそう約束しちゃったから今さら取り消せないよ!」

「明日香、知ってるか?口約束ってのはあまり効果がないことを」

「むぅぅぅ~!」

明日香は、地団駄を踏みながら頬をぷくっと膨らませてプンプンと怒っていた。
…しょうがないな。

「まぁ、その代わりデートじゃなきゃどっかにつれてってやるよ」

「お兄ちゃん♪ホントに?やったー♪わーい♪」

途端に今、沈みかけている太陽がビックリして昼まで逆スリップを起こしてしまいそうな満面な笑みでぴょんぴょんと跳ねていた。
やれやれ、まったくホント子供だな。

「ずるい~!明日香ちゃんばかり~。春くん、私との約束も忘れないでね~」

ここにも、いましたか。
別に対抗意識、燃やさなくても…。って、あれ?

「俺、姉さんと何か約束しましたっけ?」

「え?もう忘れちゃったの?さっきあのこと話したら私をデートにつれていってくれる約束をしたじゃない」

だから、デートはしませんって…。
あれ、でも、いつそんな約束……あっ。

「あっそうだ!姉さんまだ話聞いてませんよ俺。だから、約束も何もありませんよ~」

「う…そうだった。春くんとのデートのためだ…仕方ない…話そう」

だから、デートじゃありませんって…。
作品名:Wish プロローグ3 作家名:秋月かのん