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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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Wish プロローグ3

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「それはそうなんだが……」

あれ…確か明日香の奴、姉さんの家に遊びに行ったはずでは…。

「おや?何だ、腑に落ちない顔をして。何なら会長に連絡してみるか?」

そう言うと凍弥は、携帯でどこかに電話する。

「あ~もしもし会長ですか、俺です。はい…そうです。ターゲットが…はい。ということで…頼みます…。よろしく」

何だか意味のわからん会話だな…。
何のことかさっぱりわからん。
-すると

「やぁ~よく来たね♪春くん。待ってたよ~♪」

「うわぁぁッ!」

背後から突然姉さんの声が聞こえて、そしてバシバシと肩を叩かれた。

「ひゃう~春くんビックリしすぎだよ。お姉ちゃんちょっぴり悲しいよ」

よよよと泣きまねをしてみせる姉さん。

「おお~祢音先輩じゃないですか!今日もまたお可愛いことで」

「ありがとう♪暁くん♪先輩とっても嬉しいよ~♪えへっ♪」

姉さんは無邪気な子供のように、にぱっと屈託のない満面の笑みで微笑んだ。

「うおおおぉぉおおッ!『会長スマイル』を間近で堪能できるとは…、しかもそれは俺にだけ向けられたモノなんて…。うおおぉぉおおッ!!なんて俺は運がいいんだぁッ!!うおおおぉぉおおおッ!もう俺は死んでもいいッ!!」

馬鹿が頭を抱えて一人で悶絶していた。
まぁ、わからんでもないけどな。姉さん人気ありまくりだし。
そうだ、さっき暁の言ってた『会長スマイル』について説明しよう。
といっても俺には何だ普通と変わらないスマイルにしか見えないんだけどな。
一体、誰がそんなこと言い出したのやら…。

暁曰く、あの笑顔には何でも宇宙的数値でも量り得ない莫大な理性を崩壊させる精神的作用か何かが働いているのだと言う。…ってホントかよ。
それはまさに神懸り的な何か…、いや、これはもはや萌え懸りと言うべきなのだッ!!
…俺が言ったんじゃないぞ、俺はただ暁のを代弁してるだけだからな。

姉さんが一度、えへっ♪とラブリーなボイスで微笑むだけで一瞬で見る者すべてのハートを鷲づかみし、恋の奴隷(ラブリードール)と化してしまうのだ。
おかげで姉さんは学園のアイドル的存在となってしまい、今ではファンクラブも
設立され、ファンの会員数は今年200人にもなった。…すごいものだ。

でもそれが身内となると複雑なんだよな。
…まぁそれはいいとして、説明は以上だ。

「そんなことよりもどこから現れたんですか~姉さん!さっきまで誰もいませんでしたよ」

「どこからって?えっと~生徒会室からここまで来たけど、それがどうかしたの?」

生徒会室って…そんなのはありえない!
だって、もし生徒会室から来たのなら俺たちの正面を通らねばならないからだ。
そして、姉さんは俺たちの後ろから現れた。……どういうことだ。

「あの~姉さん、あなたはもしや超能力者だったとか?」

「??どういうこと?私が超能力者って」

俺の言葉にきょとんとする姉さん。

「いや~生徒会室から姿も現さず俺たちの正面を通り、後ろから現れるなんてこれはもう超能力か何かの力かと」

自分でも馬鹿なことを言ってるのはわかるが……でもなぁ。

「ん??あぁ、そのことね。あれは超能力じゃないよ~。あれはね~『技』だよ~♪なんとかってね武道の技で、面白そうだったからちょっとやってみたんだ♪えへ★」

「技って…それは素ですごいですね。でも、姉さんって武道とかの習い事してましたっけ?」

「ううん、習ってないよ」

「あれ?でも、さっき武道がどうとか言ってませんでした?」

「あぁ、それはね私の場合、ちょっと見たりしちゃったりだけで覚えちゃうから大抵のことは出来ちゃうんだ。それに、それを自己流で編み出すことも可能だよ」

「まぁ、何ていうか…姉さんってすごいんですね」

いろんな意味で…。
姉さん、恐るべし!

「あははは♪そうだよ~お姉ちゃんはすごいんだよ~。これで、春くんも私のこと惚れ直したでしょ~?」

「あはは…。そういうことにしておいてください…」

「そっかそっか♪惚れちゃったか~。じゃあ早速、今から私とデートをしちゃおうね~♪いやしよう♪は…春くんがもし望むなら夫婦の契りだって……」

夫婦の契りって…。
…いいなぁ。って何を考えている俺。

「あぁそんなことより、姉さんどうしてここにいるんですか?確か明日香が遊びに行っていたはずなんですが…」

「え?あぁ、心配しなくても明日香ちゃんはちゃーんと私の家に来たよ」

「そうですか。それじゃ、明日香は家に帰ったんですね」

「ううん、明日香ちゃんもね…実は、ここにいちゃったり~♪」

「え?明日香ちゃんもいるんですか?マジですか?」

おいそこ何喜んでる。
…ってそうじゃなくてだな。

「はい?何で明日香もここにいるんですか?!」

「いや~今日生徒会の活動があることをすっかり忘れちゃっててね。それを明日香ちゃんに話したら手伝いたいって言っちゃったりしるもんだからね、ついついその言葉に甘えさせてもらっちゃった♪」

明日香の奴、余計なことを…。

「そういうことなら任せてください。この不肖東條暁、明日香ちゃんと祢音先輩のためなら生徒会の活動に尽力を尽くさせてもらう所存であります」

「おいおい、何だか目的がすり替わってるぞ」

「え?ホントに♪じゃあ手伝ってもらおうかな~。トーくん、暁くん借りるよ~。暁くんにはアレをやってもらうことにしちゃうよ~」

姉さんは、にやりと不敵に微笑んだ。…なんだ?

「ほう~アレですか。了解です。そっちは任せました」

凍弥も、姉さんと同じようににやりと笑ってみせた。

「待ってろ~明日香ちゃん。今、俺が手伝いに行ってやるからな~」

そう言って姉さんと暁は、校舎の方へ歩いていった。

「なぁ、アレって何だ?」

「ん?はて何のことだ?」

っと、とぼけてみせる凍弥。
まぁどうせロクなことじゃないだろうな。俺は関わりたくない。

「おっと時間をロスしてしまったじゃないか。それじゃ、お前の仕事内容を説明するぞ~」

「先に言っておく。頼むから怪しげな仕事にだけは関わらせるなよ」

「ハハハ。それは、お前の働き次第だな。まぁ、生徒会の一員として頑張ってくれたまえ」

「おう。…ってちょい待て、俺は生徒会の人間じゃないしッ!」

「あらら。…失敗か。せっかくの春斗を生徒会に騙し入れる計画が……」

どんな計画してたんだ…?
つーか生徒会の横暴?…誰か取り締まれよ、頼むから。

「まぁ、それは冗談だ。しかしそのぐらいの気持ちで係らねば出来ない仕事っていうのは本当だ」

どんな仕事だよッ!?それはッ!!

「まぁ時間もないからとっとと説明するぞ」

こうして、何だかわからず俺は、入学式の手伝いをさせられる破目になったのであった。



【虹ヶ坂空港】

「やっと着きました。はい…そうですか。わかりました…はい」

虹ヶ坂空港に着いた私は、到着したことをおじ様に連絡していた。
久しぶりの虹ヶ坂に私は、とても懐かしく、そして、大切な思い出がある大好きな街。
あれから何年になるだろう…。

あの時の私は、まだ幼かったからなぁ。
でも今は、これでも少し大きくなったんですよ。
作品名:Wish プロローグ3 作家名:秋月かのん