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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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Wish プロローグ3

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「じゃあ、トランプ持ってくるね」

「ハルちゃんはどうする?」

「もちろん、お兄ちゃんもやるでしょ?暇してるし」

「パース。かったるそうだから止めとくわ」

「そう言いつつ、実は負けるのが怖かったりして」

(*¬ω¬)←こんな顔で俺を挑発しながら見つめてくる。
…何だと。

「んなわけないだろッ!いいさ、やってやろうじゃないか~!で、何で勝負するんだ?」

「うーんと……じゃあ、神経衰弱にしようよ」

「よっしゃ!みんな覚悟しろ~俺が叩きのめしてやるぜ!」

「ねぇねぇ、普通にやるだけじゃ燃えないからさ賭けしようよ。一位の人はビリの人に一個だけ命令できるっていうのはどうだい?」

「お~いいね。その方が楽しそう~」

「いいけど…無理な命令だけはダメだよ~絶対だよ~」

「いいぜ。負けなきゃいいんだからな。ぜってー勝つ!!」

「おぉ言うね~でも、このあたしに勝てるかな~。ふっふっふ…」

「上等じゃねーかッ!返り討ちにしてやるぜッ!!」

と息巻いていた俺だったのだが、実際、返り討ちにされたのは俺だった。
俺は、記憶力には自信があった。だから、この勝負は楽に勝てると最初は思っていた。
だが、それは甘かったようだ。

今思うと、たぶん俺は、最初から負けが決まっていたのかもしれないな。
これはおそらく……奴の仕業に違いない。
勝負が開始されてから数分、俺は、少しずつではあるが記憶力をいかして枚数を稼いで
いた。他の奴らも苦戦しているだろうと俺は思っていた。だが、それは違ったのだ!

たぶん、開始されてから同時に、その見えない悪魔は動き出していたのだ!
はっきりと姿を現したのは、明日香のターンの時であった。
そのターンでは、明日香はぴったりとカードは当てられなく、冬姫のターンに切り替わる
ところだった。

-まさにその時!!

明日香の引いたカードをなんと冬姫にちらりと見せてるではないか。
そう、この二人は結託していたのだった。同盟を組んでいたのだ。
しかし、気づいた時には、時すでに遅し。どうにもならん。
といってもルールに協力プレイなしともないから指摘もできない。
しょーがねーと思っていた矢先、かえでのことを忘れていた。

かえでは、ゲーオタではあるが、こういう庶民的ゲームには弱いと思っていた。
だが、これも甘かった。
こいつの持っているギャルゲの中にトランプゲームのものがあったことを忘れていた。
この時、俺は悟った。……俺は……負ける……。

それで結果は、接線を繰り広げた冬姫はかえでの援護射撃で3位、俺を嘲笑いながらかえでとトランザムし、抗戦した明日香は2位、かえでは当然1位。
まぁ、自動的に俺はビリというわけだ。

「ほいじゃ、あたしのお願いを聞いてもらうか??今更ナシはキカナイヨ??グフフ、怖くないからネ??初めては優しくしてあげっからサ☆」

手をワキワキしながら迫るかえで。




っというわけで、んでまんまと、かえで策略にハマった俺は、かえでにゲーム2個を進呈したのだった。みじめ、あまりにもな。

「やっぱ、挑発なんかに乗せられるもんじゃないな」

「何のことだ?」

「うわぁ!…って茜か、いきなり出てきやがって脅かすなよ」

「何言ってんだ。それを言うならあんたこそさっきから一人でブツブツ独り言言ってる方がもっと怖いぞ」

何ッ?!俺、口に出してたか?
やべ、すげー恥ずかしい。てか周りにはあぶねー野郎とかぜってー思われた。
あぁぁぁ~ッッ!もう俺は、お婿にいけない。

「は…春斗、どうしたんだよ?いきなり泣き出して……何かあったのか?」

「いいや。大丈夫さ……俺はこれしきのことでめげたりしないから」

「??よくわからんけど大丈夫なんだな。まぁそれで、あんたは何しに来たんだ?もしかして冷やかし?」

「いやいや違うって!俺はだな、今、究極の選択に追い込まれているのだ」

「??またわけのわからないことを。あたしにもわかるように言ってくれ」

「あぁ悪い。つまりこの二つのCDのどちらを買うか迷っているわけだ」

「あぁ!この曲いいよな~!あたしも買おうと思ってたんだよ」

茜は、急にテンションが高くなった。…こんなハイな茜は珍しい。

「ほぉ~、そうなんだ」

「でも、あんたがこういうの好きだって意外だったな。このバンド、それにこういう曲はあまり世間では知られてないから知名度がひっくいんだ。いい曲でも大抵の人は気づかないから話し相手がいなかったんだよ。でも、春斗もこの曲のよさがわかるとは、いや~さすがだ。あははは☆」

茜は、やっと自分と同じ趣味の人が見つかってよっぽど嬉しいのか、顔は嬉しさを隠し切れない様子だった。

「まぁ褒め言葉として受け取っておくよ。でも、二つを買うにはちょっと今は厳しいわけだ」

「確かにな。1枚でも二千円だから2枚となるとちょっと高いし…」

「そうなんだよな~。だから迷うんだよ」

俺の今の残額はというと……五千円と二百円。
もしもこの2枚のCDを買ってしまうと約四千ちょっとになるな。
残りの春休み、どこへも出かけず家に引きこもらなきゃならんくなる。

もちろんそんなのはごめんだ。なんせ俺はかえでとは違ってアウトドアだからな。
家にばかりいたら禁断症状が、どうかなっちまいそうだ。

「そうなると、やはり1枚にするしかないな。さて、どっちにするべきか」

「あははは。どっちもいい曲だと思うからよけいに迷うよな。あたしでも1枚しか買えなかったら春斗と同じように迷ってただろうよ」

「よし決めたッ!!」

俺は、決めた方のCDを手に取る。

「お、それにするの??っていうか春斗はそういうの決めるの早いよな」

「そうか?そうでもない気がするけどな」

実際結構悩んでたし…。

「いや、あたしだったらもう1、2時間迷ってたと思うよ。それに春斗はこれだ!!と決めたら捻じ曲げない。そういうトコは羨ましいと思うよ」

「なんか茜に似合わない台詞だな。お前ならビシバシ決めそうなイメージだけどな」

「あたしだって迷うことはあるぞ」

「そうか。んじゃレジで勘定済ませてくっかな」

「はいよ。じゃ、あたしはちょっと待ち合わせしてるから行くよ」

「おう。待ち合わせって…もしかして男とか。ひひひひ…とうとう茜にも春が来たか~。いやぁ、めでたいめでたい」

「アホか、何馬鹿なこと言ってんだよ。クラスの友達とだ。ってかあたしが男と待ち合わせなんかすると思う??せっかくの休みにさ」

「しないな」

したとしても俺か暁と遊びに行ったりするくらいだしな。

「でしょ??わかってんのにいちいちそんなありもしない馬鹿なこと言うなよ。答えるこっちが疲れるわ」

「へいへい。以後気をつけることを善処しますよ」

「そう言って今日まで1回も善処した例もないけどな」

「そうだったか?」

確かに俺の中にそんな記憶はない気もするようなしないような…。

「…まぁいいや。んじゃな」

茜は、やれやれと肩をすくませながら店から出て行った。
それにしても、茜はホント、全然、男っ気のかけらもないな。
誰かと付き合ってみたいとか思わんのか。
作品名:Wish プロローグ3 作家名:秋月かのん