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物語

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1時間目


 「キーンコーンカンコーン」
 チャイムがなり、ひっつめあたまにメガネのふくよかな先生が教室へはいってきました。
 「きりーつ!れい!ちゃくせーき!」
 「はい、皆さん、おはよう。それではさっそく今日の授業を始めます」
 先生は黒板へ向かい、コツコツとチョークで書き始めました。

 χ-(A+B+C+D…)=

 「はい。皆さん、今日はこの式について考えていきたいと思います」
 「先生ー!Dのあとの、点々はなんですかー?」
 「はい。けんくん、いい所に気がつきましたね。Dの後の点々は、このあとも、+E+Fと続きますよ、という意味です。先生は書くのが面倒ですからこのように書きましたけれども、この後もずぅーっと続いて、Zまで行きますよ。アルファベットは26文字までしかありませんが、もしZのあとにもアルファベットがあるとしたら、ずぅっとずぅっと続きますよ、ということを意味していますよ。さあ、皆さんどうですか?」
 「はい。先生、そんなの簡単すぎます。そんなに沢山を引いたら、χは0になります」そらくんが言いました。
 「はい、そうですね。ずぅっと沢山引いていくと、なんでもなくなってしまうものですね」
 先生は、また黒板に向き直って式の続きを書き始めました。

 χ-(A+B+C+D…)≠0

 「はい、それでは皆さん、これはどうですか?この記号はノットイコール。つまり、答えは0にならないということを意味しますよー」
 先生は、≠の記号を指差して言いました。
 「先生~そんなのおかしいです。減っても減ってもなくならないなんて変です!」
 「そうですか。それでは、この式が、正しいか、正しくないか、皆さん周りの人と何人かでグループをつくって、各自で考えて見てください」 
 先生がそういうと、ガヤガヤと音を立てながら、みんなは振り向いたり隣どうし、何人かで輪になってぺちゃくちゃと話し出しました。
 「わたし、あのAやBをキャンディだと思って考えてみようっと。キャンディーを持っていて、はい、のんちゃん、はい、たかちゃん、と配るでしょう?いっぱい、みんなにあげてもね、なくならないってことは、きっと、たくさんたくさんキャンディーを持ってたのよ!」みーこちゃんは言いました。
 「みいちゃん、ちゃんと、聞いてたのかい?先生は、Zも通りこして、ずぅっとずぅっとって仰ったんだよ!いくら、たくさんキャンディーを持っていたって、いつかなくなるさ!」そらくんがすかさず突っ込みます。
 みーこちゃんは、むむっと困った顔をしました。
 「わかった!ぽけ~っとの中にはビスケットがひっとっつ~♪だよ♪」となりのたかちゃんがいきなり意気揚々と歌い始めました。
 「なるほどね、減っても減ってもなくならない。ビスケットのように増えるというわけだね。でもそんなもの、本当にあると思うかい?ありえないね。それがないんだとしたら、あの式だって成り立ちはしないんだよ」そらくんがキリリといいました。
 するとみーこちゃんがいいました。「わかったあ。なくなったらまたキャンディーを貰ったらいいのよ。そしたら、またあげられるでしょう~?♪」
 「みいちゃん、そんな式書いてなかったよ…ポケットは架空のものだけれど、どんどん出てくるというのはいい考えかもしれないよ。例えば、そう、涙のような…」そらくんが言い掛けると、先生の通る声が教室に響き渡りました。
 「はーい、皆さん。お時間ですよ。前を向いて、発表してください。それでは、発表したいひと、手をあげて」
 はいはいはーい!
 みんなこれでもかとばかりに手を真上に勢いよく上げました。
 みーちゃんも元気よく手を上にぴんとあげ、にこにこ笑顔です。
 「はい、では元気なみーこさん。答えてごらんなさい」
 「はいっ」
 みーこちゃんは、先生に当てられて嬉しそうに立ち上がり、答えました。
 そらくんが心配そうに見つめています。
 「わたしたちは、アルファベットをキャンディーだと思って考えました!あげてもあげてもなくならないキャンディーχは、誰かがまたコッソリくれるか、ポケットをたたいたら、どんどんでてくるキャンディーだとおもいます!」
 みーこちゃんは、ふふんと、得意げに席につきました。
 そらくんは少しあちゃーとした顔をしていました。
 「はい、みーこさん。ありがとう。そうですね、へってもへってもなくならないキャンディー、それはあとからあとから出てきてなくなりはしませんね。先生もそんなポケットがほしいですね」
 「他に発表したい人いますか?はい、けんくん、どうぞ」
 「はいっ。僕たちの班は、χは、どんどん水が湧き出る泉のようなものだと考えました」
 パチパチパチパチみんなの拍手が鳴りました。
 「はい、ありがとう。そうですね、引いても引いても、0にならない。こんな式がもし成り立つとしたら、χは、あげてもあげてもなくならないキャンディー、または、湧き出る泉のように、数に限りのないもののようですね」
 「はーい、せんせいっ、むげんっていうんでーす!」
 ぼんちゃんが言いました。
 「ぼくのじーちゃんが、わしゃあ、短歌がむげんに湧き出る泉じゃあ~って、言ってましたあ~!」
 みんなが、ドッと笑いました。
 「ぼんちゃんのお爺さんは短歌がお上手ですものね。そうですね、無限大数とも言いますね」
 「それでは、皆さん、次の問題にいきますよ」
 先生はまた黒板にコツコツと書き始めました。

 χ÷(A+B)=D
 χ÷(A+B+C)=D

 「はい。皆さん、この式はどうですか?この、上の式のABDと下の式のABDが同じ数だとしたらどうですか?ちなみに、Cは0でもマイナスの数でもありませんよ」
 「とっても、おかしいでーす!」けんくんが答えました。
 「どこがおかしいですか?」先生がけんくんに訪ねます。
 「だって、Cが増えているんだから、どうしたって、答えは同じにならないとおもいます!例えば、6個のキャラメルを二人でわけたら、3個づつ食べれるけど、三人で食べたら、一人は2個づつしか食べられません!どうしたって、人数が多ければ、一人が貰える数は少なくなります!」
 「そうですね。χがキャラメルなら、一人にあたる数は少なくなってしまいますね。では、先ほどの初めの式を思い出して下さい。χが、あげてもあげても減らないキャンディ、湧き出る泉ならどうですか?皆さん。考えて見てください」
 みんなが思い思いに考えて、ガヤガヤとしだした教室に、
 「先生、私、そんな式嫌いです!」と、ツンとする高い声があがりました。学級委員長のりんちゃんでした。
 その声に教室がどよめきました。
 りんちゃんは立ち上がり続けます。
 「私はχをひろくんが私を好きな気持ちだと思って、考えてみます。私がAだとしたら、B子ちゃんにも、C子ちゃんにも分けてあげて欲しくないです!」
 ひゅうひゅうとはやし立てる声があがり、教室中が騒がしく盛り上がり、何人かの子がニヤニヤと笑いながら、ひろくんをつつきました。ひろくんと、りんちゃんは、このクラスで初めて誕生したばかりのカップルなのです。最近の子供はおませさんなのです。
作品名:物語 作家名:BhakticKarna