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物語

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だからずっと好きだよ


 まんまるお月様がにっこりしている夜でした。
 びわの実がゆれる木の下で、おっきなくまさんがウトウト眠りから覚めました。
 川のほとりの木だちのあいだをちっちゃなくまちゃんが、そろりそろうりと歩いてきます。
 手のひらには葉っぱをのせて、よちよちと歩くたびに、中にはいったお水が ちゃぷん ぴちゃんとこぼれました。
 やっとおっきなくまさんのところについたちっちゃなくまちゃんはいいました。
 
「ぐっすり寝てたからのどがかわいたでしょ。はい。お水を飲んで。」
 おっきなくまさんはお水をいっきに飲みほしました。
「ああ、おいしかった。ありがとう。優しいね。どうしてそんなに優しいのかな?」
「そんなのかんたん。好きだからだよ!」

 そういったちっちゃなくまちゃんのニコニコ笑顔があんまりかわいかったので、おっきなくまさんはちょっといじわるをしたくなりました。
 「どうして好きなの?」
 ちっちゃなくまちゃんはすぐにこたえました。
 「だっていつもめんどうみてくれる。おいしい木の実もとってきてくれるから。」

 「じゃあ、明日からめんどうみなくなったら好きじゃなくなっちゃう?」
「そんなことないよ。頭がいいから、いいこといっぱい教えてくれるもん。正しいこととか。みんなに橋もつくってあげたでしょ!」

 「じゃあ、明日から間違った悪いことばかりしたら?」
「そうしたら、いけないよって教えてあげる。
それに、綺麗な声で歌がうたえるでしょ?いつもうっとりいい気分になるよ。」

 「じゃあ明日から歌が歌えなくなったら?好きじゃなくなっちゃう?」
「歌が歌えなくても好きだよ。おっきくて強くてかっこいいもん!」

 「やせ細って弱くなったら?」「それでも好きだよ。とっても優しいもの。」

 「じゃあ、明日から優しくなくなったら?」
「そうしたら、今度はこっちからいっばい優しくしてあげる。それに、いつも一緒にいるでしょ!」

 「じゃあ、明日から遠くにいってはなればなれになってしまったら? 好きじゃなくなっちゃう?」
「はなればなれになっても好きだよ。君は君だもの。ねっ!だからずっと好きだよ!」

 「じゃあ、僕が僕じゃなくなったら好きじゃなくなっちゃう?」
「そんなのお月さまがお月さまじゃなくなったらっていってるようなものだよ!おっかしいんだあ!」
 ちっちゃなくまちゃんは笑いました。 おっきなくまさんも笑いました。

 お月さまがふたりを優しく見つめている夜のことでした。
作品名:物語 作家名:BhakticKarna