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化け猫は斯く語りき

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「何を云うか、吾輩は猫である。正真正銘、有り内の猫である」
「隠さんでもえーがや。おりゃーもただの猫じゃにゃーだよ」
「む、やはりそうであったか」
「おみゃーさんとちごうて、おりゃーは魔性に目覚めたばかりでよぉ。人間の言葉が分かるようになっただけなんだがや」
「吾輩も目覚めたばかりの頃はそのようであったと記憶しているのである」
「そんでよぉ、化け猫の先輩として頼まれて欲しい事があんだがや」
「吾輩で力になれるのであれば助力は惜しまぬのである」
 一飯の恩は全身全霊を持って返すのが旅猫の習わしである。
「神父様にエサを貰う前に教会の表で寝ておったんじゃあ。ほいだら、人相のわりぃあえー顔した如何にもみゃがみゃがしー空気を引き連れた男が教会にやって来たがや。その男は正面に飾ってある十字架を見上げて、ぽつりとこう云いよったがや」

『悪の十字架』

「おりゃーよぉ、ここの神父様に助けられて今があるがよぉ、おりゃーが魔性に目覚めたせいで教会を汚しちょるんじゃねーかと心配でたまりゃーせんがや」

「なるほど、その男がなぜ『悪の十字架』などと口にしたのかを調べれば良いのであるな?」
「頼めるかや?」
「一飯の恩を忘れはせぬ。無論、汝も手伝ってくれるのであろうな?」
「あたりまえがや」

 リーンゴーーン……リーンゴーーン

 教会の鐘が鳴り響くと共に一陣の風が吹き抜ける。
 教会の正面に貼られていた紙が、風に吹かれて二匹の猫の足元に落ちた。

[ チャリティーフリーマーケット、本日十時より開催 ]


  ― 『悪の十字架』 了 ―
作品名:化け猫は斯く語りき 作家名:村崎右近