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化け猫は斯く語りき

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 車は相も変わらず紫峰を目指し走り続けていたが、既に我らの興は殺がれ切っていた。聞けば小童の家は紫峰の麓にあり、家の近所で面白半分に蛙の目を小枝で刺したとの事であった。つまりは自業自得なのである。よって我らがこの小童を襲っている呪いを祓う理由は微塵も存在せぬのである。すでに解決の糸口は示してあるので、これ以後は一切手助けなどするつもりはないのである。

 げろげろげろげろ げーげーげーげー
 げろげろげろげろ げーげーげーげー

 蛙の大合唱に耳を塞ぐ小童を余所に、吾輩は何度目かの大欠伸を漏らす。

 げろげろげろげろ げーげーげーげー
 げろげろげろげろ げーげーげーげー

「うるさいな」

 探偵屋は次第に大きくなる蛙の大合唱を車内から追い出すために、車を操る舵輪から手を離したのである。
 その刹那、吾輩の横で耳を塞ぎ震えていた小童が唐突に顔を上げ、探偵屋に向かって言葉を発したのである。

「変えるの? 音量」


 げろげろげろげろ げーげーげーげー
 げろげろげろげろ げーげーげーげー


  ― 『蛙の怨霊』 了 ―
作品名:化け猫は斯く語りき 作家名:村崎右近