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化け猫は斯く語りき

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 陰陽師夫妻に朝まで留守にする事を告げ、近所に住まう猫属すべてに妙案が無いかと訊ねて回ったのであるが、得られた答えは『猫なら関係なく騒げるのに人間は窮屈だ』と云う感想のみであった。しかし他ならぬその言葉が吾輩に妙案をもたらしたのである。つまりは関係なく騒げば良いのである。
「たまたま日が同じであると云うだけの事ではないか」
「それは屁理屈というもので……」
「えぇい! 頑として撥ね退けると云うのであらば、この界隈にある有りと有らゆる物に魔性を与え、寝る間もない程に忙しい毎日を送らせてくれようぞ!」
「それではあの子にも危険が及んでしまう」
「なに、危険な魔性など生みはせぬ。どれも些細な物である」
「例えばどんな?」
「そうさな、夜毎に汝の頭髪を奪いに来る人形などである」
「ひぃっ」

 斯くして、たまたま“くりすます”と同日に友人一同を招いた宴を催したのである。陰陽師夫妻から“ぷれぜんと”なる贈り物を渡された娘はこう云った。
「あー! くまの人形!」
 “ふらいどちきん”と“けーき”なる食物を存分に堪能した陰陽師の娘は、己の我侭を聞き入れてくれた両親に深く感謝しつつこれを生涯に一度の事と心に決め、自ら陰陽師の修行を始めることを願い出たという。

 その娘が立派に成長し独り立ち出来るようになるまでそっと傍らで見守り続けておった事などは、吾輩の口から語る事もなかろうと思うのである。


  ― 『悪魔の人形』 了 ―
作品名:化け猫は斯く語りき 作家名:村崎右近