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愛を奏でる砂漠の楽園 01

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 まるで国中の料理が集まっているかのような豊かな光景を見て、シナンは嘆息した。
 先月近隣国との戦いに敗れたこの国は、貧困した状況へとなっている筈だ。だが大広間の中へと広がっている光景は、そんな状況とは無縁であるとしか思えないものであった。胸に何とも表現しがたいもやもやとした物を感じながら、シナンは大広間の奥へと進んでいく。
 大広間の中に居るのは、座布団(ミンデル)へと体を預け水煙草(シーシャ)を嗜んでいる男達と料理を運ぶ奴隷達だけでは無い。身なりの良い男達の側には、後宮で暮らしている美しい側室や奴隷達の姿もあった。
 いつもは後宮から出る事を許されない彼らであったが、今日は王の喜寿を祝う宴とあって、特別に後宮を出る事を許され大広間で客の相手をしているのだ。
 馬鹿らしい光景だ。
 我の強い女を好んでいるシナンは、王子でありながら権力に目が眩み媚びを売って来る女を苦手としていた。そんなシナンには、美しい側室に媚びを売られ鼻の下を伸ばしている男達の気持ちは理解し難いものであった。
 大広間の奥には、選りすぐりの美女と美青年を玉座の周りへと侍らしている父王の姿がある。玉座の前で片膝を付くと、シナンは抑揚の無い声でそんな王へと向かって祝いの言葉を述べていく。
「外せない用があり遅れてしまい申し訳ありません。これからも国の繁栄と父君のご活躍を、心からお祈りしております」
 シナンの王に対する態度は、父親に対するものというよりも、他人と接するようなものであった。後宮から殆ど出て来る事の無い王は、シナンにとって父親という存在では無かった。それどころか、尊敬の念を抱くべき王でさえも無い。色欲に溺れた蔑視する存在でしか無いのだ。
 そんな相手に頭など下げたく無い。
 しかしそれを、王の前で出す事は微塵も許されない。
 ここから退席する為に、ただひたすら息子に対して全く興味を示さない王の言葉を、シナンは待ったのだった。