監禁愛~奪われた純潔と囚われの花嫁~(完結編)
数メートル前方に設置された大きな鏡には、まさに今の二人の姿がくっきりと映し出されている。拓人の方は背広の上着こそ脱いでいるものの、ワイシャツも着ているし、ズボンも履いたままで股間をくつろげているだけだ。服を着たままの彼に対し、愛奈だけが一糸纏わぬ生まれたままの姿になっている。
拓人の足許に跪いて懸命に奉仕する自分の姿はあまりにも屈辱的で惨めで、淫らだった。
ショックに顔から血の気が引いていくのが判った。しかし、そんな反応すら、彼を歓ばせるための趣向でしかない。
「初めてにしては上出来だ。よくできたご褒美に今度は俺が愛奈を気持ちよくさせてやろう」
打ちのめされている愛奈に最早、逆らうすべはなかった。拓人は愛奈を軽々と抱き上げ、ベッドに押し倒す。すかさずその上に覆い被さると、烈しく唇を貪った。それから両脚を膝を立てた状態で大きく開かせる。
「拓人さん、何を―」
何をするのかと不安げな声を出した愛奈を拓人は宥めるようにその太腿を撫でた。
「何も考えなくて良い。いつものようにただ俺を感じていてくれ」
ふいに尖らせた舌先が彼女の蜜壺に挿入され、愛奈の身体がピクンと跳ねる。
「あ? 拓人さん、そこは」
いやと言おうとして、また身体がビクビクと立て続けに撥ねた。生まれて初めて与えられる刺激はあまりにも強すぎるものだった。これまで指を挿れられたことはあるけれど、舐められたことなどなかった。
「いや、止めてっ。汚いから、そんなところは」
暴れる愛奈の両脚を力をこめて押さえつけ、拓人が濡れた声で呟く。
「汚くなどないさ。さっき、愛奈も俺のを舐めてくれただろう。愛し合う男と女の間には汚いなんて言葉はない。何をしてもされても、極上の快楽になるだよ。よく憶えておきなさい」
拓人は愛奈の蜜壺を舌で刺激しながら、快感に膨れ上がっている花芽を指先で捏ね回す。何度も続けている中に、いつものあの感覚―身体の奥底から湧き上がってくるうねりを感じた。
「あっ、あっ、来ちゃう」
「達けば良い。思いきり感じて達ってごらん」
耳許に熱い息が吹きかけられる。蜜壺のとりわけ感じやすい部分を更に舌で嬲られ、愛奈は絶頂に達した。
「俺ももう我慢できない」
愛奈はまだ絶頂の余韻にいた。そんな彼女の両脚の間に座り、拓人は彼女の片足を高々と持ち上げ肩に担ぐ。
「ぅぅーうっ、あ、ぁあ」
いつもとは違う内壁の場所を鋭い楔が穿ってゆく。幾度もすり上げられ、犯される。いきりたった剛直が狭い蜜道を何度も通過する度に、あらゆる箇所が刺激され、愛奈は甘い声で啼いた。
堕ちていく。どこまでも堕ちていく。
「堕ちる、堕ちてしまう」
達したばかりなのに、また小さな絶頂が来る。何度か達した後に訪れたのは、かつてないほどの大きな波だった。大きなうねりに呑み込まれ、愛奈は好きなように翻弄される。
「堕ちれば良い。堕ちておいで、俺の腕の中に」
そして二度と飛び立つことができないように、この鳥籠から逃げられないように、俺が底なしの快楽という鎖で永遠にお前の翼を縛り付けてあげる。
耳許で囁かれた男の口調は夢見るようで、どこか倒錯的な熱さえ帯びていた。そして、愛奈の最も敏感な最奥で男の熱が弾ける。ビュクビュクと飛び散る飛沫に奥を濡らされながら、愛奈はその烈しすぎる快感についに意識を手放した。
Waking(めざめ)
その二日後、愛奈は十六日ぶりに登校した。本当は昨日から登校しても良いと拓人に言われたのだが、前日にあまりにも烈しく愛を交わしすぎたために、翌日は一日中、ベッドから出られない状態だったのだ。腰が立たなくて、その日はずっと寝ていなければならない有様だった。
流石に可哀想に思ったのか、昨夜は拓人も訪ねてはこなかった。久しぶりに広いベッドで手足を伸ばして寝(やす)めたせいか、身体も心もいつになくすっきりと感じられる。
自分のここのところの生活がいかに拓人という男に支配されていたかを改めて思い知らされた。
クラスメートたちの態度は特に変わらなかった。二週間余りに渡っての欠席は、病気療養中と届け出られていたようだ。友達はそれを信じて疑っていないようで、親友の満奈実ですら
「入院してたんだって、大丈夫?」
と気遣ってくれる始末だった。しかし、それも当然といえばいえた。そういう愛奈だって、これが我が身に起こったことでなければ、小説かドラマの中の出来事でしかあり得ないと思うだろう。
現実世界に女子高生を監禁して、ペットのように飼い慣らし性の道具扱いする男がいると誰が考えるだろうか。
だが、担任の大木先生だけは真実を知っているらしかった。授業の合間にも時々、物言いたげな眼を向けてくるが、かといって、直接話しかけてくることはもちろん、拓人との関係や欠席していた理由について訊ねてくることはなかった。
ただ放課後、廊下ですれ違ったときに大木先生は悔しげに言った。
「校長から安浦の家庭の事情については余計な口出しは控えるようにと言い渡されてしまったんだ。生徒の家庭のことにまで教師が干渉するのは越権行為だと君の従兄から陳情があったようでね」
つまり、拓人が何かと目障りな大木先生に校長を通じて牽制したということだろう。
「先生、私なら大丈夫、何とか自分の力で乗り切ってみるから」
気丈に言い切った愛奈に、大木先生はやるせなさそうな顔で頷いた。
「担任なのに、何も力になってやれなくてごめんな」
その何かに耐えるような表情がつい先日、哀しい別離をしたばかりの反町君と重なる。反町君もこんな風に辛そうな顔で?ごめんな?と何度も繰り返した。
本当は謝らなければならないのは愛奈の方なのに、彼は謝ってくれた。しかし、反町君が悪いわけではないし、大木先生が教師として力足らずなのでもない。
拓人は日本国内だけでなく海外にもその名を轟かせる大企の社長で、社会的にあまりにも影響力がありすぎるし、力を持っている。
そんな拓人に彼らが敵うはずもないのだ。そのことを愛奈は誰よりよく知っていた。
「明日もまた頑張って登校します」
愛奈が笑顔で挨拶すると、大木先生は泣き笑いのような顔で頷いた。
「待ってるぞ」
愛奈は心からの感謝を込めて大木先生に頭を下げた。
けれど、拓人は知らない。誰よりも権力を持っているからといって、けして人の心は力や金で手に入るものでも自由になるのでもないことを。
拓人が愛奈に執着し彼の側に繋ぎ止めておこうとすればするだけ、愛奈の心は彼から離れてゆくのだ。ホテルに連れ込まれてレイプされた夜、愛奈の中で?大好きで優しい従兄?は死んだ。今、愛奈を籠の鳥のように飼い慣らしているのは彼女の知らない、ただの冷酷で女好きの若社長にすぎない。
久しぶりに登校したその日は流石に疲れた。思えばずっと心身ともに疲労しっ放しだった。昨日を除けば、拓人が来ない日はなく、従って必然的に日毎、夜毎、愛奈は彼に抱かれてばかりいたのだ。
登校は許されたものの、電車での通学を拓人は最後まで認めなかった。送迎を車でという条件付きでの通学だ。今日の放課後だって、黒塗りの高級車が校門前に横付けされ、生徒たちの間ではちょっとした騒ぎになっていた。
作品名:監禁愛~奪われた純潔と囚われの花嫁~(完結編) 作家名:東 めぐみ