監禁愛~奪われた純潔と囚われの花嫁~(完結編)
その光景を見た刹那、愛奈は生理的な嫌悪感を感じた。何か見たくないものを見せられているような。その理由が最初は判らなかったけれど、直に思い当たった。室内の様子がいつかテレビの時代劇ドラマで見た遊廓にそっくりだったのだ。
それは確か吉原遊廓を舞台にした花魁のドラマだったと思う。苦界と呼ばれる吉原という女の地獄で生きる女たちの愛と哀しみを描いたものだった。
拓人が何故、こんな場所に自分を連れてきたのかは判らない。でも、何かこれが自分にとっては危険な状況を示しているのだということは愛奈にも察知できた。
「ここなら見せ物にならずに、ゆっくりと話ができる。さて、お前が何故、あの男と逢ったのか聞かせて貰おうじゃないか」
拓人は洋風のリビングには見向きもしなかった。大股で洋間を横切り、襖を脚で開けるなり、愛奈を血色の褥に放った。
愛奈は小刻みに身体を震わせながら言った。
「拓人さん、ここじゃなくて隣の明るい部屋で話をしたいの」
だが、拓人はそれが聞こえなかったかのよように質問を繰り出してゆく。
「あの男は学校には行ってないはずだ。なのに、お前たちは逢った。つまりは、お前があいつを訪ねていったのか?」
「私は」
「お前は俺の婚約者なんだぞ! 将来の夫が決まった身でのこのこと他の男に逢いにいったのか」
今日の拓人さんはおかしい。愛奈は拓人の異常さに怯えた。第一、愛奈は拓人と婚約などした憶えはないし、彼を未来の夫と認めてはいない。言っていることが支離滅裂で、事実と全然一致していない。
「私は拓人さんと婚約なんかしてないし、結婚を承諾したつもりもないのに。何でそんなことを勝手に決めるの?」
涙が溢れて止まらなかった。
拓人が一旦部屋から出ていった。ホッとした矢先、すぐに戻ってきた彼の手にはピンクのケータイが握られていた。拓人は愛奈を抱いていたはずだから、あのボディガードが荷物を運び込んでおいたのだろうか。
やばい、あれを拓人に見られたら、万事休すだ。愛奈は桜色の唇を戦慄かせた。
「拓人さん、そのケータイには今度の実力テストの範囲表が入ってるの。不用意に触って画像が消えたら困るから」
暗に触らないで欲しいと頼んだのに、彼はわざと見せつけるように愛奈の眼前で二つ折りケータイをゆっくりと開く。それをのぞき込みながら、口角がニヤリと笑みの形を象った。
「なるほど、そういうことか」
彼は意味ありげなまなざしで愛奈を見た。
「まったく、とんだ売女だな。天使のような愛らしい顔をして男に媚を売る淫乱女か」
拓人の美しい顔がいっそう艶を帯びて艶麗に輝く。
「この写真を見ただけで、お前が俺を裏切った証になる」
拓人は忌々しげに呟き、ケータイを力をこめて投げつけた。一度では足りず何度も拾い上げてはたたきつける。
愛奈は悲鳴を上げた。
「止めて、ケータイが壊れちゃう」
反町君との想い出がなくなってしまう。
「壊れたって構うものか。また新しいのを買ってやる」
拓人は興奮の色を秀麗な面にのぼらせ、鼻で嗤った。
「いや、ケータイだけじゃない。いけないことをしたお前にもきついお仕置きが必要だな。二度と私に隠れて悪さなどしないように躾けておかなくては」
?仕置き?という禍々しい響きの言葉に、愛奈はまたも怯えた。
「お願い、乱暴はしないで」
震えながら哀願する彼女に、拓人はいっとう優しい声色になる。
「もちろんだ、俺の可愛い愛奈に乱暴なんかするものか。うんと可愛がって、この世の極楽を見せてあげよう」
やはり拓人は尋常ではない。愛奈はじりじりと座ったまま後退した。拓人が追うように間合いを詰めてくる。
「おいで、可愛い俺の小鳥」
拓人の美しい顔にこれまで見たことがないほど艶やかな微笑が浮かんだ。
一刻の後。
冬の椿を思わせる深紅の褥の上には、一糸纏わぬ姿にされた愛奈が横たわっていた。両手は高々と持ち上げた形で緋色の紐で縛られている。
「あ、あぁっ、う―ん」
声を洩らすまいと固く歯を食いしばっても、拓人の巧みな愛撫の前には無垢な愛奈の抵抗を封じ込めるのなど赤児の手をひねるよりも容易いものだ。
拓人の熱に浮かされた唇が愛奈の首筋から鎖骨、胸の谷間を辿る。さんざん揉みしだかれ吸われ続けた胸の突起は紅く染まり、唾液に濡れ光っているのが何とも淫猥だ。
拓人は実に女の身体をよく知っている。さんざん愛撫を施された乳房の突起が触れて欲しいとしきりに訴えているのを知りながら、わざとその唇はその箇所を外れて通過していく。
「どうだい、ここだけでなく胸も触って欲しいかい?」
拓人は何とも蠱惑的な声音を愛奈の耳許に注ぎ込む。既に胸と蜜壺への同時の愛撫を施され、愛奈は二度も絶頂に達している。むろん、最初は泣き叫んで烈しく抵抗した。だが、さんざん暴れる愛奈の耳許で彼はこう告げたのだ。
―お前次第では、あの哀れな父と息子を北海道にも行けなくしてやることもできるんだぞ?
その言葉の示す意味は漠然としていた。単に転任先の仕事も奪ってやるという意味にも取れるし、考えたくはないが、この世からの抹殺という意味にも取れないこともなかった。
優しい従兄がそんな犯罪のようなことに手を染めるとは思いたくないが、先刻の胡乱なボディガードを雇っているところを見れば、愛奈の知らない場所でかなりきわどいこともやっているのは明らかだった。
反町君やその父親を盾に脅されては、最早なすすべはなかった。抵抗を止めた愛奈を拓人は意のままに扱った。
更に愛奈は過酷な現実を突きつけられた。拓人に愛撫を施された身体は直に快楽という名の降伏をあっさりと受け容れたのだ。乳房を捏ねられるように揉まれ熱い口で吸われれば、微弱な電流のようなものが乳首から全身に走り抜け、下肢は甘く潤んでいった。
流石に自分でも触れたことのない花園に触れられたときは弱々しい抵抗を示したものの、それも恥丘の割れ目をなぞっていた指が花唇をひらき蜜壺に侵入してくる頃には、もう陥落して甘い喘ぎを上げていた。
「愛奈がこんなに快楽に弱い身体だったなんて、知らなかったよ。嬉しい発見だな、これは」
拓人はすごぶる上機嫌だ。今も愛奈は蜜壺に二本の指を抜き差しされながら、クチュクチュと胸の先端を吸い立てられている。彼のざらざらした舌で乳輪を円を描くように舐められ、先端を弾かれると、言葉にはできないような痺れが乳首から下半身にかけて駆け抜ける。
更に同時に下半身を弄られれば、瞼の奥には様々な色の鮮やかな光が絶え間なく閃き、夢見心地になった。
「うぅ、あ―ん」
全裸で蜜壺を弄られ、胸を吸われて責め立てられる愛奈はひっきりなしに艶めかしい喘ぎ声を上げている。白い裸体が緋色の褥で悶え乱れる様は見ていられないほど嫌らしく、拓人はそれを恍惚の表情で眺めていた。
「綺麗だ。堪らないくらい色っぽいね」
拓人の額にひとすじの前髪がはらりと乱れてかかれっていた。元々が美しい男だけに、今、彼は壮絶な色香を醸し出している。虚ろなまなざしの奥には消えることのない情欲の焔が炯々と点り、どこか壊れたような口調で愛奈の身体の感じやすさを褒めたたえる。
作品名:監禁愛~奪われた純潔と囚われの花嫁~(完結編) 作家名:東 めぐみ