小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

監禁愛~奪われた純潔と囚われの花嫁~

INDEX|9ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 

「汗をかいたら、制服から下着の線が透けて丸見えだ。こういうのって凄く色っぽいけど、俺はお前のそういうのを他の男には見せたくないからな。ブラだけじゃなくて、ちゃんとキャミソールとかスリップとか重ねて着てくれよ」
 言い終わらない中に、背中のブラを止めているホックの辺りを指でつうっと撫でられた。
「やだ、何するの?」
 愛奈は振り向き、非難を込めて拓人を見た。
「なかなか男には良い眺めだけどな」
 拓人が片眼を瞑って見せるので、愛奈は?知らない?とプイとそっぽを向いた。拓人が変なことを言うものだから、それまで気にしたこともなかったことが妙に気になり始めた。
 早く汗で濡れた制服が乾いてくれないかと気を揉んでいる中に、前の面談者の母子が出てきた。クラスの女子の中でも割と仲の良い女の子だ。
「バーイ、愛奈」
 言いかけたその子が傍らの拓人を見て、眼を丸くする。
―このイケメン、どこから降って湧いてきたの?
 その子のショートヘアがよく似合う丸い顔には、もろにそう書いてある。もちろん高三ともなれば、そんなことを口にしないだけの分別はある。
「そちらはお兄さん?」
 と、淑やかに訊ねてきた。
「うん、、まあ、そんなところ。従兄なの」
―なーに、こんな素敵な従兄がいたなんて知らなかったわよ。明日、ちゃんと話しなさいよ。
―判った。判った。
 無言のやりとりを交わし、愛奈は拓人とともに教室に入った。
「今日はご苦労さまです。担任の大木と申します」
 大木亮先生はまだ三十歳になったばかりの英語の先生である。去年、初めての子どもが生まれたところで、授業中にはしばしば脱線して話が可愛い盛りの我が子になってしまう。
 けしてイケメンというタイプではないが、教え方も上手いし、相談にも親身になって乗ってくれると生徒たちの間でも人気があった。
「こちらこそ、愛奈がいつもお世話になっています」
 拓人は軽く頭を下げ、用意された椅子に腰掛けた。生徒用の椅子は長身の彼が座ると、長すぎる脚がいささか窮屈そうである。
 愛奈も拓人の隣の椅子に並んで座る。大木先生は机を挟んで向かい側に座った。
「愛奈さんのお父さんがお亡くなりになったたことについては、本当に残念なことでした。失礼ですが、そちらさまは愛奈さんとはどういうご関係でしょうか?」
 もちろん、大木先生は父の葬儀には参列してくれた。学校の方にも一応、保護者が変わることは届けてはおいたのだが、確認の意味もあるのだろう。
 拓人は頷き淀みなく述べた。
「私は愛奈の従兄になります。愛奈の父と私の父が兄弟だったもので、身寄りのない彼女を私が引き取りました」
「そうですか、愛奈さんに頼もしい従兄がいて下さって良かった。それでは早速、本題に移りますが、愛奈さんはN短大の幼児教育学科を志望されています。今の成績では特別推薦枠、つまり特待生待遇の受験でも十分合格できると思いますよ」
 その言葉に、愛奈は眼を輝かせた。
「本当ですか、先生。特別推薦枠で行けそう?」
「うん、安浦は頑張ってるからなぁ。このままの成績を維持できれば、今年の十二月早々の特別推薦枠で受験してみれば良いと思う」
 大木先生の頼もしい言葉に、愛奈は満面の笑みを浮かべて拓人を見た。
「特別推薦っていうのは、小論文と面接だけの簡単なテストで良いの。でも、これで合格するには校内でもトップクラスにいないと駄目なのに、嬉しい! 特待生待遇になるから、入学金も全額免除されるのよ」
 実はこれが愛奈にとっては一番嬉しいことだ。入学金が免除されれば、かなりの負担が軽減される。もしかしたら拓人にこれ以上無理を言わなくても、自分で何とかできるかもしれない。
「先生、私、頑張って十二月の特別推薦入試を受けます」
 愛奈が揚々と宣言したそのときだった。思わぬ横槍が入った。
「待って下さい」
 大木先生と愛奈は一斉に拓人を見た。
「愛奈は大学には行きません」
 その刹那、愛奈の大きな瞳が一杯に見開かれた。
「拓人さん、何言ってるの?」
 だが、拓人は愛奈の方は見ないで大木先生の方を真っすぐに見つめている。
「彼女は高校卒業後は家庭に入る予定です。ですから、大学には行きません」 
 もう一度、愛奈に言い聞かせるように繰り返した。
「ちょっ、止めて。私はそんな話を聞いたこともないし、家庭に入るつもりなんてないもの」
 愛奈が拓人にムキになって言うのを心配そうに眺めやり、大木先生は拓人に問う。
「しかし、私はそういう話を本人からも聞いておりませんし、亡くなられたお父さんからもこれまでの担任には愛奈さんは大学に行くということでお話を伺っていると思いますが」
 大木先生は手許の資料を拓人に指し示した。
「これが一、二年の進路希望調査票です。一、二年時の三者面談はこの調査票を元に行われているはずなので、これが亡くなられた親御さんも納得されていた進路だと思いますが」
 調査票にはもちろん?N大短大部幼児教育学科?と愛奈の字で記入されている。父の印鑑もあった。
「これまでの進路はそうだったかもしれません。ですが、今の彼女の保護者はこの私です。彼女の身柄を預かる以上、決定権を持つのは当然のことだと思いますが」
 悪びれもせずに言う拓人に、大木先生が息を呑む。愛奈は拓人の袖を引いた。
「拓人さん、どうしたの? 何で、そんなことを言うのよ」
「ちなみに卒業後、家庭に入るというのは、どういうことでしょうか? 具体的に言うと、自宅で家事でもするということですか」
 大木先生の控えめな問いに、拓人は簡潔明瞭に応えた。
「彼女は僕の妻になります。だから、そういう言い方をしました」
「―」
 流石に快活な大木先生も顔色を変えた。
「妻、まだ彼女は高校生ですよ」
「もちろん、卒業までは待ちます。それから後は、彼女がどうしようと、あなたには関係はないのでは?」
「!」
 大木先生は自らの感情を鎮めるかのように一旦うつむき、それからすぐに顔を上げた。
「私は彼女の担任教師です。確かに卒業までの縁かもしれませんが、だからこそ、卒業後の進路まで責任をもって見届ける必要があると考えています。あなた方が愛し合っていて、きちんと話し合った上で結婚されるというのなら、もちろん私は心から祝福できます。でも、どう考えても、今の段階で彼女がこの話に納得しているようには見えない。そういう状況で、あなたは大学に行きたいという彼女に行かせないと言い、妻にすると言う。私には納得の行きかねる決定です」
 大木先生の言い分は当然のことだ。しかし、拓人は首を振り、立ちあがった。
「別に、あなたに認めて貰おうとは思っていませんよ、先生。これは僕たちの問題ですから。愛奈、帰るぞ」
 最後の科白は愛奈に向けられたものであることは判った。愛奈は慌てて立ちあがりながら、大木先生に言った。
「先生、何かの誤解か勘違いだと思うので、また明日、お話しさせて下さい。これから従兄とよく話し合ってみますから」
「しかし、安浦」
 大木先生は既に拓人が教室を出ていったのを確かめてから小声で言った。