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ミステリー短編集  百目鬼 学( どうめき がく )

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 それから二週間が経った。二人の刑事は焦ってる。その息抜きにと、珍しく百目鬼がコーヒーを沸かし、芹凛にカップを手渡した。
 芹凛は一旦香りを嗅ぐが、目を閉じたままでいる。仕方ないヤツだなあ、と百目鬼は呟き、芹凛の耳元で、「薄い壁一枚の隣室、それがキーだよ」と推理の呼び水を試みる。
 これにハッと目を覚まされたのか、芹凛の仮説が吹き出す。
 その内容とは……。 

 宇砂戯は薄い壁の向こう、隣室の伊吹が宝くじを当てたことを察知する。そして伊吹の当選金を横取りしようと、自分の部屋に誘い、毒殺。あとは雑木林に埋める。
 それを隣室から窺っていた炎、宇砂戯を部屋に呼び、絞殺。炎は隣室のオサムに感付かれ、当選金の山分けを約束し、共に宇砂戯を埋葬する。

 だが、炎は欲に目が眩んだオサムに刺殺されてしまう。
 事は連鎖的に展開して行った。しかし、オサムは伊吹の口座からどう金を引き出すか、良案が見つからない。下手すれば捕まる。そんな困ったオサムを誘導したのが、今までのすべてを見て来た亜瑠だった。
 彼女は目立つことなく、大金を手にする方法を考えた。

 それは、まず伊吹の当選金を、各自のPC内にメモられていたパスワード等を使い、ネットバンキングで殺された女三人に振り分ける。
 そして掃除代として、三人から月10万円ずつ自動振り込みさせる、また無理矢理に結婚したオサムにも、伊吹、宇砂戯、炎から家賃代を振り込む。これを生涯途絶えることがない利得にするためには、この三人にはずっと生存していてもらう必要がある。
 そのため亜瑠は――すでに殺され、雑木林に埋められてしまってる三人に、ネット内で、現在も生きてるように自らなりすました。