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ミステリー短編集  百目鬼 学( どうめき がく )

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 三日の時が流れた。百目鬼が聞き込みから戻ると芹凛が天井を見上げてる。
「おい、お前の言う仏さんの写真投稿から目星は付いたのか?」
 百目鬼が訊くと、芹凛は赤く腫らした目で、「殺害された夫人はhappysachikoと名乗っていて、毎月の月初に、多分好みだったのでしょうね、あの公園のフェンスの隙間から御来光を撮って載せてるのですよね、だけど……」と、もう一つ進展がなさそうだ。

「ほー、いい趣味じゃないか、それが未明に公園に行った理由なんだな。それで?」
 百目鬼が突っ込むと、「それが、あとはダンナとの仲睦まじい写真ばかりで、フォロワー数が千を超える人気者ですが、犯人に繋がるような写真はまだ見付かってません」と芹凛が唇を噛み締める。
 ここは上司の出番、「ちょっと写真を見せてみろよ」と百目鬼は要求し、さあっとチェックしてみる。そして突拍子もない質問を投げ付ける。
「おい、芹凛、3対6対1の法則って知ってるか?」

 芹凛はこれにキョトン。この反応を確認した百目鬼、あとは先輩らしくオヤジの講釈を一節。
「いいねが一杯付いているけど、こんな幸せそうな写真ばっかり見せ付けられたら堪ったものじゃないよな。だから本当にいいね、素晴らしいと思うヤツが〈3〉、どうでもいいねが〈6〉、こん畜生、殺してやりたいと思うヤツが〈1〉、いわゆるこれらの写真の裏には3対6対1の割合で閲覧者がいるってことだよ」

「そうなんだ」
 芹凛は思わず目から鱗が落ちるがごとく漏らしてしまった。こんな意外にも初(うぶ)すぎる芹凛に、今度は百目鬼が「お前、ホントに刑事なのか」とポカンと口を開けてしまう。