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ミステリー短編集  百目鬼 学( どうめき がく )

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 こんな報道に世間は大騒ぎとなった。そしてその興味に呼応するかのように、百目鬼刑事と部下の芹凛こと芹川凛子刑事は急ぎ現場へと入った。

だが、つまるところスマホだけが被害者のそばに転がっていただけだ。他に犯人に繋がる手掛かりは何もない。そのためかいつになく百目鬼刑事が「うーん、すべては藪の中だな」と手応えなく吐く。しかれども芹凛にはピーンと来るものがあった。
「これはきっと写真投稿のSNS絡みだわ」

 第六感だけの芹凛の言葉に、「何じゃ、それ?」と百目鬼が顔を覗き込む。というのも百目鬼は未だガラパゴス・ケータイを愛用し、ラインやインスタなどに馴染みがない。要はちんぷんかんぷんなのだ。

 されどもこのコンビはうまく組み合わされている。百目鬼の古典的な知識や思考を部下が充分補完してくれるのだ。
「今流行ってますよ。だから、このスマホの中に、犯人に繋がる手掛かりがありそうだわ」
 芹凛の目がキラリと光る。百目鬼は、まだ若いが、この女鬼の勘に一目置いている。

「よっしゃ、そのSNSとやらを、とことん調べてくれ」
 百目鬼は現場でこう指示を発し、そそくさと署へと引き上げたのだった。