星追い人
着替えを済ませたローグと、その肩に乗ったガレンは部屋への道のりを歩いていた。さっぱりとした様子のローグに近付いてきたのは、青い衣を纏った年頃の少女二人だった。どちらもローグよりも年は若いようだ。
「今日来た旅人さんですよね?私、生まれてから旅人さんを見るのは初めてなんです!」
「私もです!その、宜しければお話を伺ってもいいですか?旅のお話とか、旅人さんのこととか」
きらきらとした目で見つめる少女たちを見てから、思案した。
「明日宴があるって聞いたんだけど、その時でもいいですか?今日は早く休みたいので」
「はい!もちろんです」
「やった、楽しみにしていますね!お邪魔してすみませんでした、ゆっくり休んでください」
嬉しそうにして通路を曲がって行った彼女たちを見送って、肩を落とした。
「モテモテですなあ。どっちが好みなの?髪の長い方?それとも短い方?滞在期間延ばしちゃう?ふぁっくる?」
「うるさいよ」
下卑た笑いを浮かべているガレンの首を摘んで歩き始める。ガレンが謝り始めるまで、ローグは彼を持った手を大きく振り子のように揺らしながら歩いた。
部屋に着く頃には、ガレンはぐったりとしていて、布団に横たわった。
「それで、この宝玉のことだけど」
「それ、後じゃ…だめ?」
「だめ。で、これなんだけど…爺さんの話に出てきたあの話を連想させないか?碧い宝玉」
息が切れ切れのガレンの言葉を一蹴して取り出した宝玉の色はとても深く、深海を思わせるような緑がかった碧だった。
「俺が想像してた宝玉、晴天とか、海の色と思ってたんだけどな」
「紺碧とは、また違うよ。あと、今は表現の具体性について語ってるわけじゃないから」
「知ってる!あ、もしかしてあの老いぼれの話に疑い持ってんの?」
「いくら爺さんより年食ってるっていっても、その言い方はないんじゃないか?」
「いいだろ、どうせどっちもジジイなんだし」
「現役バリバリのな。いずれにせよ、ここまで来ると赤い衣を纏った踊り子が自分で身を投げた話も微妙なラインなんだよね」
ベッドに腰を掛けて横たわったローグの腹の上に、ガレンが乗った。
「何が気になってるの?そんな昔話どうだっていいじゃないか。それに、本当にその宝玉なのかもわからないんだから」
「まあね。でもどうだってよかったら、こんな玉持ってきてないよ」
リュックに玉を入れ換えてから細い息を吐き、目を閉じた。外はもう日の幕が閉じきっていた。
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