星追い人
「クスノキっていう木が数百年という時を経ると石になるの。それが樟石。後で息を吹きかけてみてよ、面白いことが起こるから」
ぐりぐりと、固い角の生えた頭をローグの頭になすりつける。「痛い」と言い、ガレンの首をつまんで左腕に収めた。
「おや、動物をお供につけておいででしたか。それにしても珍しい出で立ちですな」
「異国の生き物で、懐いたので連れて来ました。大食いで本当に困っています。可愛いから許容できますが」
首の裏を撫でながらしれっと言ってのけた彼を、恨めしげな視線で見るガレンに気づかないふりをしながら、流れていく壁の絵に視線を戻した。
「ここが一番出入り口に近い場所になります。もし何か不自由があったら申してください」
「わかりました、ありがとうございます。あの、いくつかいいですか」
「ええ、構いませんよ!」
「ここに来る前に子供を見掛けたのですが」
「子供ですか?もし赤い服を着ていたのなら、リアーですな。あの子は外に出るのが好きですから。旅人様に話しかけてはいなかったでしょう?」
「はい。それが?」
「いえ、それならば良いのです!他には?」
「この崖の上には何かありますか?街や、集落など」
「崖の上のことは何も。申し訳ありません」
「そうですか、ありがとうございます。ゆっくりさせて頂きます。あ、最後に」
「なんでしょう?」
「水を浴びる場所はありますか?」
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