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涼子あるいは……

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「あのぅ、早く本題に入っていただきたいのですが。私はさっきから余計なことをしゃべっています」
袋田がてきぱきとやらない理由はなんだろう?
「岡田先生、それは思い違いですよ。本題には、もうとっくに入ってます。こんな緊急時に私が無駄な時間を費やしているとでもお思いですか? 私は尋問中ですし、先生は尋問をされている真っ最中なんですよ」
「おかしいなぁ。では、私と山岸とのことを、私から話し始めることによって、さらに尋問らしくしようではありませんか。本題とはそういうものでしょう?」
金吾は袋田にたぶらかされているようで心配になってきた。
「ああ、そうではない。まだ話はそこまでいっていないんですよ。お若い方は性急ですから無理もないことですがね。ここは、私のペースに従ってください」
金吾は、これは人格調査や思想調査だと思い至った。この線を辿れば核心に至るはずだと袋田は絶大な自信を持っているらしかった。金吾は、思い込みにはまっている袋田の、真剣さと頑固さに気おされそうだった。
「さっきの話、吉本バナナのとっつぁんの言ってたことに似てること、に話を戻しますとね、先生は、要するに、男女関係の心理学のようなことをお書きになったんですか? その点については、私のようなおやじでも、関心はまだまだありますんですが。あのぉ、やっぱりアレは幻想ですか、そもそも?」
「はい。幻想というよりは、倒錯ですね。錯覚の一種です」
どうして答えてしまうのか、と金吾は忌々しく思った。
「私は、女房との間に二男一女をもうけましたが、これも、もとはといえば、倒錯や錯覚の仕業?」
「そうです」
「はあ、そうですか。そうじゃあないかとかねがね疑っておったんですがね。やっぱりそうでしたか。
で、幻想と幻想以外とはどうやって区別するんですか?」
「まず、区別はできないでしょう。区別という働きが幻想によって生じるのですから」
「幻想は、伝播するのでしょうか、さらに、遺伝が可能なんでしょうか?」
作品名:涼子あるいは…… 作家名:安西光彦