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涼子あるいは……

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「学問とはそういうものです。そんなこと、とうにお分かりだったでしょうに」
酔眼朦朧、教授はやがて常軌を逸していく……
「眠れる白雪姫を輪姦したのは、七人のコビトでしたよねえ。もっとも白雪姫も悪女だったから、仮死状態の振りして、薄眼を開けてコビトたちを誘っていたのですがね。そうだ、女の問題もあったな。女もまた度し難いのです! コビトも女も養いがたい、教育を受けつけない輩だ! 
コビトたちはやがて白雪姫に飽きて、本来のホモ同盟を再建しようとする。不法の金鉱掘りに専念しようとする。白雪姫の処分に困る。白雪姫自身も身のふりかたを思案する。ホステスにでも出ようかしら、とかね。そこに世間知らずの愚鈍な王子が現れて、あまりに都合よくこちらの願いをきいてくれた。みんなの軽蔑と失笑を買うことになるんですが。
あなたはそんな矮小人たちの作る共同体に入り込みたいらしい。まさかあなた、白馬にうち跨ったバカ殿、じゃないやバカ王子になろうなんて思ってやしないでしょうな。コビトたちの淫液にまみれた白雪姫を探し当てて嫁にしようなどと、救いの神めいた気分になってやしないでしょうね。噴飯ものです! あなた、気は確かですか? ただじゃあすみませんよ」
「先生こそ、気は確かですか」
教授はさすがにむっとしたのか、話をやめて、焦点の合っていない眼で金吾を見ようと努力した。努力は無効だった。
金吾は、これほど酔った教授を見たことがなかった。彼は、頭の中で何度も繰り返してきたが人にはめったに聞かせたことのない猥雑な演説を酔いにまかせて垂れ流していた。あなたのためを思って、とか、悪いことは言わない、といった自己正当化のための言葉でこの勝手千万な妄想を締めくくるのだろう。金吾は辟易としている。教授のおしゃべりは止まらない。
「ブドウ状球菌を顕微鏡で観察するのは楽しいですが、その菌を素手にぬたくるのは真っ平でしょ? 
あなたは、彼らの内に十四五年前の自分と自分の悪徳を見て、実にいやな思いをするでしょう。さらに恐ろしいことには、それらの悪徳が今もあなたの身の中に冬眠状態で生きていて、ふたたび活動しかねないことを発見するでしょう。実際、それらは見られると動き出すものなのです! 
作品名:涼子あるいは…… 作家名:安西光彦