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涼子あるいは……

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金吾はため息をつきながら要求した。袋田はそれに応じるように、テーブルに眼をやった。ノートパソコンが置いてある。
「とてもじゃないが資料全部を覚えられませんので、画面を時々見させていただきます。そちらからは見えないように置かせていただきます。他のかたがたのデータも混在していますので、申し訳ないですが、お見せすることはできかねます」
すでに電源は入れてあった。キーを二三回押してから、袋田はうなった。
「岡田先生は、1984年生まれ。東京都日野市のご出身だ。八王子東高を出て、その年に東京大学の文科三類に入学、教育学部の卒論が、ソシュール言語学批判序説、修士論文が、対幻想の心理学。二つとも何のことやらこっちにゃあさっぱりわかりませんがね。この修論は、今秋に出版予定だそうですな。いやはや、小学校の先生というよりは学者さんですね。私大出の万年司法試験浪人生だった私なんぞ足元にも及ばない秀才なんだ。そもそも、高校三年のときに、駿台と河合塾の全国模試で一位をとっていらっしゃる。どうして法学部に行って官僚かなんかにならなかったんですか? 何が悲しゅうて小学教師に?」
「それは私の勝手です」
金吾は、去年の、指導教官との面談を思い出していた。テキは、腹を割って話そう、などと言ってきた。

雨上がりの秋の日の夕方、研究室のソファに坐って、ブランディーを飲みながらのことだった。
二階の窓からは、カナリア色の銀杏並木を透かして赤門が鮮やかに見えていた。金吾は一時間前にその門をくぐってやってきた。
作品名:涼子あるいは…… 作家名:安西光彦