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涼子あるいは……

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捜査本部は、アジールの組合事務所の強制捜査に踏み切った。山崎も含めて主だった組合員にはアリバイがあった。地方から刈り出してきた同盟員の犯行であるらしい、と袋田は金吾に電話で語った。大量のデータが押収された。警視庁公安四課の捜査員と、警察庁情報通信局から出向してきたハッカー上がりの若い技官たちが活躍した。何重ものロックを突破してたどり着いたのは涼子によって整理整頓された極秘情報ファイルだった。組合の裏綱領、行動計画、組合員の履歴、役割分担、国内外の過激集団との連絡記録、逃亡者用のアジトのアドレス等々、袋田が随喜の涙を流しそうな内容が明らかになった。
組合内部での以前からの対立が顕在化し、若い世代の一部が新組合を作るらしい。一握りの強硬派が警察と検察の介入に抵抗を示しているが、半数以上の組合員が脱退した。組合という組織形態そのものに教員たちは強い不信感を抱くに至った。
金吾は袋田の話を聞いて思った。強制捜査は校長と涼子を殺害した犯人捜査に名を借りた組織つぶしの様相を呈してきている。袋田の長年の夢が実現しつつあった。もはや、袋田がどれだけ涼子殺害の犯人探しに情熱を持っているのか疑わしい。やがて校長殺害犯は逮捕されるだろうが、涼子殺害事件は迷宮入りになり、袋田は責任を取らされるだろう。
高岡正輝教諭は、七十年代の爆弾闘争の前歴が発覚し、市教委と都の教育長から厳しい査問と勧告を受け辞職した。爆弾闘争そのものについてはすでに時効が成立していたが、その後の行動については連日警察の尋問を受けているそうだ。アジ―ル副委員長の山崎教諭は、異動願いを出し、即座に受理された。
教室の机が二つ減った。
太郎は転校した。
金吾は盆に一日だけ登校し、編入試験のための内申書を書いた。太郎は八月末の試験に受かり、二学期からは学芸大付属小金井小学校に通うことになった。家族とともに国分寺市に転居したはずだ。両親から長文の手紙が来ていた。
友彦は死んでしまった。
作品名:涼子あるいは…… 作家名:安西光彦