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涼子あるいは……

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学校に戻り、車や人ごみを縫って正門に近づくと、そこに、九時より緊急集会、生徒さんは一時帰宅して待機してください、と書いてあった。これではファイルは返せない。警察が気づかないことを祈るばかりだった。だが、私はそれほど心配していない。血液検査を、児童と、実質的には教員、事務員にも実施していることを、刑事課はまだ知らないだろう、知っても、すぐに問題にすることはないだろう。事件と関連付けるほど彼らは想像力が豊かではないだろう」
金吾にはもう反論する力はない。知らなかったからこそ袋田たちは尋問の際に血液検査をやったのだ。なんだか友彦の言うとおりのような気がした。
「君の観測は正しい。しばらくは大丈夫だ。警察は別のほうを向いている」
「そいつはありがたい」
友彦はにやりと笑った。スクロールしていたマウスから手を離した。なにかを見つけたようだった。再びにやりと笑った。
「質問はたったそれだけか。まあ、いい。これは山岸涼子から君への遺言だ。見せてやろう。はははっ、私はなんて親切なんだろう!」
友彦はパソコンの画面を金吾に向けた。そこには涼子の驚くべき秘密が書かれていた。読み始めた金吾の仰天振りが見てとれたらしく、友彦は苦笑しながら横を向いた。

金吾さん。
ロックがはずせましたね。また会えましたね。うれしい。
私はもう生きていないでしょう。すでに、死が私の背後に忍び寄ってきているのを感じます。今、惨めな死骸の私は、たくさんのひとにその無様さを曝け出していることでしょう。誰かが私を殺すだろうとわかっていました。その誰かをあなたはもうご存知のはずです。あなたにとって、おそらくはもっとも意外な人物でしょう。私にはだれだかわかるような気がする。いいえ、はっきりわかります。友彦君と太郎君でしょ? あの子たちに殺されたんなら本望だわ。私には、自力で死ねない以上、あの子達の力で、私を殺させようとしている気配さえありますからね。
しかし、誰であるかなんぞどうでもいい。もう死んでいるんだし。
もう死んでしまっている私のことを詮索してもつまらないでしょうが、私は、あなたに言い残しておきたいことがあります。
作品名:涼子あるいは…… 作家名:安西光彦