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涼子あるいは……

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当日の抵抗は皆無だった。もしも私の真摯な殺害行動に対して、彼女の抵抗があったとしたら、私は気が荒立ち、不愉快を募らせ、なぜ素直にさっさと死んでくれないのかと腹を立てていたことだろうね。彼女の背中と後頭部は、いますぐそうしてくれと言わんばかりだった。待っていましたと言わんばかりだったのだ。その誘惑に私は心踊った。私は勃起した」
「だまれ! やめろ! 聞きたくない!」
金吾は大声を出した。
「嘘つけ! 本当は聞きたいんだ。ここがいいところ、聞きどころじゃないか! 聞き逃しちゃだめだよ。それに、黙って話を聞くとさっき約束しただろ?
さて、長くて太い金属針はかすかな抵抗を受けながらもすんなりぬめりと入った。あっけないほどだった。一瞬で涼子は自分の肉体を蹴ってどこかへ飛び去ってしまった。木槌に力を込めすぎたと思った。もっとやさしくしてあげればよかったのに、と思ったほどだ。その挿入感は、涼子の別の部分への別のものの挿入感を即座に思い起こさせ、私はすみやかに射精した。
まったく簡単な、晴々とするようなエクササイズだった。本来死は簡単なのだろう。
針の端には、工事現場で使う黄色い水糸を通しておいた。これを引いて針を抜くのだが、頭がついてきてしまってやや難儀した。針の先と耳との間に、脂肪と血液の混じった体液がつり橋のように伸びてたちまち垂れ落ちた。針は包んできた新聞紙に戻してザックに入れた。耳とテーブルをティッシュで拭いた。床も二三ヶ所拭く必要があったがね。半ズボンの右足の裾をつたって精液が垂れたからだ。私のペニス本体も拭く必要があった。下半身裸になった。ぬぐったティッシュは濡れたパンツといっっしょにザックに入れた。一連の私の行動に対する太郎の呆れ顔がおかしかったね。太郎は「僕も漏らしたけど、このまま我慢する」などと言っておったぞ。
殺害の後、すぐに彼女のバッグから鍵束を盗もうとした。鍵束を右手で掴んだ瞬間に、バッグの中の携帯の着メロが鳴った。君のと同じエリック・サティだ。私にとっては、部屋中にとどろきわたるかと思われるほどの衝撃音だったなぁ。神経過敏になっているのを自覚させられてしまって恥ずかしかった。サブディスプレイに君の名前が点滅していたよ。君は金吾くんと呼ばれていたんだね。無視した。
作品名:涼子あるいは…… 作家名:安西光彦