涼子あるいは……
で待った。その日はこれを八回くりかえした」
友彦は間をとって、金吾を窺った。十歳の子供に性的な自慢話を聞かされ、おめでたいコキュが自分であることを思い知らされたからには、もう金吾には自尊心のかけらさえも残っていなかった。
「私はそれ以後性欲の奴隷になった。天国から地獄へ転落した。涼子個人の奴婢にもなってしまったんだ。いやいや、それどころではなかった。私は人間以下だった。私は猿で、涼子が猿回しだった。猿回しの肩や背中や腰や太腿にしがみついている猿が私だった。部屋の中では実際そうしていたな。外でもこっそりやった。涼子の右足首に両足を乗せて私の腹を膝頭に貼り付け、彼女の鼠磯部にしがみつくのが私のお気に入りだった。どうも、涼子もそうらしかった。私はこの役柄を楽しんで演じた。子供の日常に帰りたくなくなった。里に降りると猿は撃ち殺される。涼子の体にぶら下がって柿でも食べ続けていようと思った。私は見えない首輪と縄をつけられて、いろいろな芸を教わった。ごほうびは射精だった。屈辱と快楽は表裏をなしているとつくづく悟った。私に段々と、猿のエッセンスが染み込んできた。私は猿に眼覚めた。物まねが生きがいになり、物まねどころではなくなってきた。私が当時どのくらい猿化していたかは今でも興味深い問題だ。
涼子は、私が、無心に知識を身につけるべき時期に、現実の限界を受けずに希望を無限大に膨張させても許される時期に、眼先の快楽だけを追い求めてうろちょろし、恥のかき通しで始終顔を真っ赤にしている猿にまで私を引き摺り下ろした。飛翔しようとする者の翼を刈りとって、赤いちゃんちゃんこを押し着せた。猿ぐつわをかませたのだ。いかんと思ったときは、すでに遅く、私はすっかり猿になっていたのだ。私以外にも多くの者が似たような目にあった。何度この快楽地獄から脱出しようと試みたことか。猿は猿回しに抱かれて眠るが、いつ師匠の寝首をかいて脱走しようかと窺ってもいるのだ。
しかし、性の呪縛はわれわれを内側から捉えてついに離さなかった。脳にかかったフィルターは、はぎとることがもうできない。プライドは地に落ちた。
友彦は間をとって、金吾を窺った。十歳の子供に性的な自慢話を聞かされ、おめでたいコキュが自分であることを思い知らされたからには、もう金吾には自尊心のかけらさえも残っていなかった。
「私はそれ以後性欲の奴隷になった。天国から地獄へ転落した。涼子個人の奴婢にもなってしまったんだ。いやいや、それどころではなかった。私は人間以下だった。私は猿で、涼子が猿回しだった。猿回しの肩や背中や腰や太腿にしがみついている猿が私だった。部屋の中では実際そうしていたな。外でもこっそりやった。涼子の右足首に両足を乗せて私の腹を膝頭に貼り付け、彼女の鼠磯部にしがみつくのが私のお気に入りだった。どうも、涼子もそうらしかった。私はこの役柄を楽しんで演じた。子供の日常に帰りたくなくなった。里に降りると猿は撃ち殺される。涼子の体にぶら下がって柿でも食べ続けていようと思った。私は見えない首輪と縄をつけられて、いろいろな芸を教わった。ごほうびは射精だった。屈辱と快楽は表裏をなしているとつくづく悟った。私に段々と、猿のエッセンスが染み込んできた。私は猿に眼覚めた。物まねが生きがいになり、物まねどころではなくなってきた。私が当時どのくらい猿化していたかは今でも興味深い問題だ。
涼子は、私が、無心に知識を身につけるべき時期に、現実の限界を受けずに希望を無限大に膨張させても許される時期に、眼先の快楽だけを追い求めてうろちょろし、恥のかき通しで始終顔を真っ赤にしている猿にまで私を引き摺り下ろした。飛翔しようとする者の翼を刈りとって、赤いちゃんちゃんこを押し着せた。猿ぐつわをかませたのだ。いかんと思ったときは、すでに遅く、私はすっかり猿になっていたのだ。私以外にも多くの者が似たような目にあった。何度この快楽地獄から脱出しようと試みたことか。猿は猿回しに抱かれて眠るが、いつ師匠の寝首をかいて脱走しようかと窺ってもいるのだ。
しかし、性の呪縛はわれわれを内側から捉えてついに離さなかった。脳にかかったフィルターは、はぎとることがもうできない。プライドは地に落ちた。



