涼子あるいは……
金吾は両足を伸ばして下着といっしょにズボンを脱いだ。上体を前倒しにしてズボンを足首から抜くとき、背中を涼子の乳房が押してきた。蛍光灯を背後から浴びて、二人の並んだ頭が床に影を落としている。
すぐさま金吾が涼子の後ろをとり返した。犬が電信柱におしっこをするときのように、右足をあげさせる。頭をもぐらせて、アメリカンコーヒー色の小陰唇と肛門をすする。
熱闘四十分。
とうとう涼子が逃げ始めた。フローリングの上を、ヤモリのように這い回る。右肘が右の膝頭にくっつく。左肘が左の膝頭にくっつく。金吾は涼子の腕と体側と太腿が作る三角形の内心に両手をついて追っていく。両脚をまっすぐ伸ばし足首で小刻みにこぎながら背後から接合したまま追いかける。
結局、三角形から両手を抜き、涼子の両肩の前に突く。肩そのものを押さえつけては痛かろう。涼子の前進が阻止され、後ろからの挿入が深まり煮つまり追い詰まって、とうとう金吾は我慢ができなくなり、長くて深いため息のような射精をした。
同時に、涼子は、左の頬を床に押しつけ、口を半開きにして、身震いした。むせびなくような、長くて深いため息がもれた。
……右腕を強く掴まれたのを感じた。体育専科の田中館先生が、厳しい目つきで顔を左右に振りながら金吾を引き戻した。金吾は無意識に霊柩車に歩み寄ろうとしていたのだった。
涼子の伯母が霊柩車に乗り込んだ。車は警笛を一声鳴らすと、こわれものを運ぶように、ゆるゆると校庭を四分の三周した。門を過ぎて姿を消そうとした時、全校生徒の半分近くが列を離れて走り出した。泣きながら霊柩車を追った。白熱の太陽の下であるにもかかわらず、校門周辺のライトとフラッシュがすさまじい。
金吾は生徒を引率して教室に戻ってきた。さっきの幻覚や昨日の夢が残した心の負担はとり除きようがなく、筋肉疲労のように金吾をだるく痛め続けた。頭痛がますますひどくなってきた。セミの声が頭に響く。全身ぐったりしてしまい、教壇の隣の椅子にへたり込んだ。



