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涼子あるいは……

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金吾は、繰り返して記事を読んだ。そして、さらに長い時間をかけて、見出しの横に載っている涼子の義父の写真を見続けた。もともとぼやけていたらしい写真がコピーしたことによってさらにぼやけて黒ずんでいる。
しかし、明らかなことがある。この顔をやや痩せさせて、眼鏡をかけさせ、髪の量を減らすと、ある人物にそっくりではないか!
金吾は、女史の顔をうかがった。金吾に謎をかけているのだろうか。そうとは思えない。女史は気づいていない。
驚くべきことに、写真の顔は、校長にそっくりだった。
女史が気づかなかったのも無理はない。彼女は眼鏡をはずした校長の顔をこの七年間一度も見たことがなかったのだから!
「校長…」
金吾は興奮したり空想にふけったりすると独り言を言う悪い癖がある。周囲のものを不審がらせる。
「校長? 校長先生がどうかしたの?」
「いえ、なんでもありません」
金吾はコピーをアルバムの上に重ねてテーブルに置いた。
「そう。それならいいの。話のついでに言っちまうけど、校長先生に関して、ひとつ心配なことがあるのよ。涼子さんとは直接は関係ないことだから余計なおしゃべりになっちゃうけどねえ。ちょいと失礼するわね」
女史はそう言って、ソファにごろりと横になってしまった。そうやって毎晩テレビを見ているのだろう。はやくこの姿勢になりたかったのだろう。
「涼子さんがいなくなったんで、また学校内が荒れてくると思うのよ。涼子さんという緩衝装置があったから、校長派とアジールは冷戦状態を保てたの。だけど、これからはそうはいかないわ。もう私は部外者だから、要らぬ心配かもしれないけど。しかし、またあのときみたいな暴行事件が起きて、校長先生が負傷して出血なんてことがあったら大変なのよ。普通の意味での大変じゃなくて、本当に大変なのよ。ああ、変な言い方!」
女史は、肘枕をしたまま、大変だ、をくり返した。
金吾は早くその理由を言ってくれと願った。女史の言っていることが涼子と関係がありそうに思えてきたのだ。女史も、もうすぐ山崎と同様に泥酔して寝込んでしまう。その前に言ってくれ。
写真に写った涼子の義父が金吾を睨みつけていた。
「あのねえ、校長せんせいはねえ、血液型がRHマイナスなの。だから輸血が必要になるような出血をするととても困るのよ」
なんだって? 金吾は仰天した。
作品名:涼子あるいは…… 作家名:安西光彦