涼子あるいは……
涼子の裸身は神々しいまでに美しかった。全身がピンク色に光り輝き、今にも炸裂するかのように生命力に満ち溢れていた。このぎっしりと充実した肉体が、今は、司法解剖の結果、内臓をすべて抜かれて張りぼてのようになって霊安室に横たわっているとは。そんな姿は見たくなかった。監察医務院には行かない。金吾は決心を確認した。
金吾はさらに涼子と女史の親密さに驚いていた。女史と涼子が、予想以上の深い付き合いだったことがわかってきた。深いだけではなく、異様なところがないだろうか。風呂場での写真をくり返し見ながら、金吾は不審に感じ始めていた。これ以外にも写真があるように思えてきた。そういえば小物入れの裏に積まれていたのはアルバムではなかったか。
「……研修の後でも涼子さんから質問がきたので、電話で説明するよりもわかりやすかろうと、何度か五小へ行ったわ。すでに、新学期は始まっていました。涼子さんの人気は、生徒たちの間で、もう、爆発してしまっていてね。私が昼休みに訪れたときに限っても、保健室はいつも子供たちで満員だったわ。私のころとはエライ違いだわ。そんなときに生徒に撮ってもらったのがそこに並べてあるの。周りを生徒たちがとりかこんでます。男の子も女の子も涼子さんに触りたがって。みんな、にこにこ顔だわねえ。
去年の今頃、生徒たちが、先生の人気投票をやったの。涼子さんは、二位以下に圧倒的な差をつけて一番だったそうよ。これは当人から聞いたんじゃないのよ。この施設の副院長のお孫さんが五小に通っていらっしゃいます。それで、副院長からお聞きしたの。副院長の長女がPTAの副会長です。君もご存知の方だと思うわ。因みに、二番はどなただったとお思い?」
「私は新米ですから、わかりませんね」
見当はついたがとぼけた。
「校長先生よ」
やっぱり、と納得した。赴任後数ヶ月の身ではあるが、それは分かった。
「一般には、校長ともなると、生徒と日常直接的には接触なさいません。しかし五小は違う。校長先生は、もしかすると担任よりも、一人一人の生徒の特徴や家庭環境を詳しく把握していらっしゃるかもしれないわ。



