小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

涼子あるいは……

INDEX|117ページ/217ページ|

次のページ前のページ
 

袋田はお前とさらに仲良くなる。ナイーヴな正義感と復讐心につけ込んでね。袋田とお前だけの同盟ができる。今日の保健室での尋問は、今後の対策についての話し合いだったんじゃないか? なあ、そうだったろうが? ここだけの話っていうやつを随分と聞かされただろう? 
たとえばこんな具合さ。君だから話すんだ。信頼しているんだ、今後ずっと協力してくれれば、君が殺ったにしろ殺らなかったにしろ、これ以上しつこく君に付きまとって尋問を続けるつもりはない、とか言ってきてさ。バーターだ。取り引きだ。警察が大昔からやってきた手だ。実は俺らだって、たまには小出しでやってきたんだ。当の袋田とさ。何度も喧嘩してきた袋田とだぜぇ。袋田も所詮は下っ端だから、上の誰が糸引いているかは、わかってないがな。もちろん俺らもわからん。しかしとにかく、そういう要請が降りてくるらしい。俺らが昔からやってる化かし合いに、新参者のお前も手を染め始めたっていうことよ。今度はお前が直に組合に侵入して活躍してくれることになって、袋田は大喜び……」
「ちょっと、あんた! なに言ってるんだ!」
金吾が大声を出しても、山崎と店の亭主は平然としていた。
山崎は得意の流し眼で金吾を見ながら、またビールを自分のグラスに注いだ。顔面には薄笑いが漂ったままだ。表情から人間的なものが消えうせて、吐き気を催すような、なにやら得体の知れないものが押し上がってきていた。金吾は急に酔いが引いてきた。そして、ある疑惑にとりつかれた。
「俺の言ってることが事実に反するんならば、実際はどうだったんだ? ほかにはありえないはずだがなあ。お前は、なにやら理由をつけて、もしかしたら、涼子の遺志をついで、とか何とか言って、組合に入る気になったと俺らに言ってくる。俺らはお前が組合に入るのを絶大の興味を持って了承する。お前は、涼子の後釜になって事務全般を管理する。秘密の漏洩は更にスピードアップすることになる。しかし手ぐすね引いて待っていたこっちの罠にはまって現場を取り押さえられてぶち殺されるんだ。こっちは、そんな展開を予想しているんだがね。
へへ、組合に入りたくなってんだろう?、そうすることにしたんだろう?、お話し合いの結果? 
あのなあ、聞きたいんだけどな、ポリからいくらもらってんだい?」
作品名:涼子あるいは…… 作家名:安西光彦