帰郷
「どうやった?」
篤信の部屋に戻った三人、陽人もそれなりに気になっている様子で朱音に問いかける。
「あたし、分かるわ。サラの気持ち」
話す限りではしっかりとした女の子で、悪い印象はなかったと朱音は言う。朱音の意外な反応に陽人と篤信は目を丸くした。
「私もね、いじめられた訳じゃないけど、よくからかわれたもん」
「ああ、そうだったっけなぁ」
「帰国当初は篤信君がいたから助かったってのはあったよ」
「そんな大袈裟な――」
篤信は照れ笑いをしながら、二人はおよそ十年前の昔話を始めた。
「お姉はどっちの味方なんよ」
陽人が目の前でのろける二人の会話に割って入る。
「そういうアンタの方はどうやったの?」
「え?ああ。お父さんは日本語ほとんど駄目っぽかった。うちの父さんの方がまだ上手だった」
陽人の説明で朱音は大体の日本語レベルが分かる。二人の父は日本語を聞いて理解するが、話すのは苦手だ。サラの父はそれよりも日本語はわからないようだ。
「家では日本語がないんだろうね」
陽人は黙って頷く、二人ともアメリカにいた頃の生活を回想した。
「僕思うんだけど――、あの子も何か淋しそうに見えたけど?」
篤信はさっきまでの話を総括した。
「私もそう思う、悠里が言うには『悪い子ではない』って言うんやけど、悠里の言う通りかも……」
「何かがスレ違っとうんだろうね」
「一人は悪くなくても集団になるから厄介なんだろうね」
三人は再び首を傾げた。
「そのサラって子がお姉の思た通りの子なら、悠里は何とか出来ると思うよ」
陽人がその沈黙を破ると、二人は陽人の方を向いた。
「仲間が欲しいんとちゃうの?本当の意味での、詰まるところ」
二人は頷いて陽人の話を聞く。
「あとは悠里次第やね。本人が自分で何とかしたいって言うんやから見守ったげようよ」
三人は健気にも日頃ニコニコしている悠里を思い浮かべると、妹なら何とかしそうな、そんな気がした。