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ACT ARME9 ~人と夢と欲望と

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ツェリライの言葉に、No.7はさらに愉快そうに笑う。その眼には嘲りが混じっている。
「似た者同士じゃと?笑わせる。そんな玩具で如何にして我と戦うつもりじゃ?」
玩具。それはツェリライに対して最も向けてはいけない禁句。しかし、ツェリライは意外にも全く憤慨することなく、しかも相手の言葉を受け入れた。
「あなたから見れば僕のQBUはそう見えても仕方ありませんね。それの機動性、隠密性、殺傷力は僕のQBUの比ではありません。真正面からぶつかりあえば、勝負にならないでしょう。」
実はツェリライのQBUは殺傷能力は0に等しい。以前フォートに対してつかった技も、実はかつてツェリライが懐に仕組んでいたスタンガンの応用で、くらった相手はしばらく指一本動かすことすらままならないが、死ぬことは決してない。
一応、自らの孔をエネルギー変換させてビームとして放つことはできるが、それはあくまで防御用。相手に向けて放つことはない。
「非戦闘員の身でありながらこの場に立っている神経が理解できんな。主は何の理由でここにいる?」
「興味があるからですよ。といっても戦闘ではなく、あの人にですがね。」
ツェリライが即答し、指差した先には、いつの間にか上のほうにある段差に腰かけ、足をぶらぶらさせながらを高みの見物をしているルインの姿があった。
ツェリライが自分を指差していることに気がついたのか、にこやかな笑顔で陽気に手を振っている。
普通、自分が命を狙われている際にあんなどうぞ狙ってくださいと言わんばかりの場所にいたりしない。
今この場が一対一の決闘の場になっているのだとしても、まだ隠れている相手がいて狙われる可能性だってあるのだ。相手から命を狙われている者のする行動ではない。
「なるほど、確かに興味が沸く童じゃな。しかし、その自らの好奇心のために命を投げ捨てるつもりか?」
「好奇心をなくした研究者は廃人と同じですよ。」
迷いのない即答に、No.6は思わず声をあげて笑う。
「主も他人のことを言えない奴じゃな。  まあいい。しからば、ここで命落とすことになろうと化けて恨み言を言うでないぞ?」
「ええ、もとよりその覚悟です。では始めましょうか。」
ツェリライがQBUを展開させる。だが、No.7は上から見下すように嘲笑した。
「では始めましょうか?愚かな。『今から始める』のではない。『もう始まっておる!』」
その言葉が終わる前に、すでにツェリライは膝をついていた。
一瞬何が起こったのか分からなかった。しかしすぐに理解できた。
No.6の浮遊物体はステルス機能がある。QBUにも備わっている機能ではあるが、No.6のそれはQBUよりもはるかに高性能だ。
ステルスといえば、視覚のみを擬態する機能だと思いがちだが、完璧なステルスというものは視覚を含めた五感すべて、さらには人の五感には備わっていないセンサーなどの探索装置すらも容易く欺けるのだ。
No.6のステルスは、その完璧にほど近いものだった。しかし、ツェリライはそれをわかっていた。
No.7の頬を抓ったあの時、No.7に近づいてきた浮遊物体に誰も気が付いていなかった。護身のため密かに体に張り巡らしていたQBUのセンサーも感知しなかった。
迂闊といえばあまりにも迂闊である。相手の手の内を読んでいたにもかかわらず、まんまとその手に引っ掛かってしまったのだから。
幸い、一応背後を防御していたおかげで致命傷は免れた。しかし、QBUの張ったシールドは、最大強度ではなかったとはいえ簡単に破られている。
このまま守りに入ってしまえば自ら負けに行くようなもの。勝つためには、この目に見えない攻撃をかわすしかない。
「申し訳ありません。少し、油断していたようですね。」
ツェリライは膝に手をやりながら足腰を踏ん張って立ち上がる。腹をくくっているとはいえ、やはり普段は非戦闘員である自分にとってこういう場はきつい。
「あなたのそのマシンに敬意を払い、僕もQBUの最大の力をお見せしましょう・・・!」
すでにフラフラなくせに気障ったらしい振舞いをするのは自身にしみついた習性なのか。余裕のない状態で余裕を見せる姿はいささか滑稽だが、それでもNo.6は油断しなかった。
なぜなら、ツェリライの周囲に浮かび上がったQBUの数を見たからだ。
その数20。たいしてこちらは6。数に劣ることはもちろん考慮していたが、ここまで差があるとは予想していなかった。
己の思考のみで操作できるとはいえ、これの操作は決して簡単なものではない。常人ならまともに動かせるまでに一週間はかかってもおかしくない。ましてやそれを複数同時に操るとなると、出来ない者は一生かけようともできない、人を選ぶ技術だ。
No.6自身も、安定して動かせる数は6。当然攻撃力は他の者に対して低いが、暗殺にかけてはNo.6の右に出る者はいない。
相手は殺されたことすら理解できずに死んでいく。傍から見ればそれは手も触れずに人が死ぬのだから恐ろしいことこの上ない。
その隠密性はこの者に対しても有効だった。だから油断せずに仕留めればそれで終わり。現にNo.6は既に自らの浮遊物体をツェリライの背後に回り込ませている。気づかれている様子はない。あとはこのままブスリとやればそれでいい。
先程は防御をされて完全に仕留めることはできなかったから、今度は攻撃力を上げればいい。
既にあれの命は己の手の中。後は半分彼岸にはみ出しているその体を押してやるだけでいい。
その相手は今なお気障ったらしい不敵な笑みを浮かべ続けている。それがただのはったりなのか、それとも本当に余裕があって笑っているのか。後者だとしたらますます面白みのある奴である。
「その力とやらを、我に見せてみろ。」
「ええ、そのつもりです。」
QBUが一斉に攻撃を仕掛けてきた。
が、No.6はそれを制止した。
「少し待っておれ。」
そういうや否や、自身の浮遊物体のうち一つをステルス解除し、どこかへと飛ばしていった。
どうやら戦闘で頭がハイになっていたNo.7にお灸を据えに行ったようだ。何やらギャースカ騒いでいる。
しばらくの口げんかの後、浮遊物体が帰還した。
「すまない。待たせたな。」
「いえ、互いの胸中を遠慮なく言い合える相手というものは貴重ですから。気にしていませんよ。では、再開しましょうか。」
今度こそツェリライはQBUで一斉攻撃を仕掛けてきた。その数は15。残りは自身の防御用に残したのだろう。
だが、時すでに遅し。そちらの攻撃が来る前に、こちらが止めをさしている。No.6は、確実に首の後ろを狙ってツェリライを彼岸へと押し出した。
「うまく隠れたつもりでしょうが、僕には見えていますよ。」
首の後ろに向けられた止めは、ツェリライのQBUによって止められた。
それも背後全体をシールドで防御したのではない。直接QBUで止めたのだ。
No.6は驚く。まさかステルスを見破られるとは。
だが、まだ終わっていない。すぐれた暗殺家は一度失敗しても二度目の攻撃を備えている。そう、もう一つツェリライの背後に忍ばせてあるのだ。
今一つの攻撃を防ぎ、こちらへ攻撃の手を向けている今、奴の防御は空いている。
今度こそ終わりだ。
「ですから、僕には見えています。」