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ACT ARME9 ~人と夢と欲望と

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ツェリライは慌てず騒がずもう一つの攻撃も防いだ。
「何・・・じゃと?」
さすがに驚いた。この者は、こちらに攻撃を差し向けながら、完璧に近いステルスを完全に見破っていたのだ。
一つの頭脳でそこまでの処理をするとなると、それこそ無理な話だ。しかしこの男はそれをやってのけた。
だがまだ終わってはいない。
ツェリライはNo.6の浮遊物体の数を知らない。当然の話だ。戦闘開始から今までずっとステルス状態を維持していたのだから。
まずはこちらに向かっているQBUをすべて落とし、丸腰になったところを叩けば・・・。
「もう一度だけ言います。僕には全て見えています。あなたのそれが残り4つであるということもね。」
その言葉は、No.6の背後に控えていた浮遊物体が次々と破壊されていったことで証明された。
そこまで何もなかったかのように見えた空間からうっすらとQBUの輪郭が浮かび上がり、はっきりと姿を現したとき、No.6は完全にQBUに包囲されていた。
No.6は小さいため息をつくと、苦笑しながら諦めたように両手を挙げた。こちらの攻め手を封殺された以上、これ以上の闘争は無意味だ。
それに何より、こちらに攻撃を差し向けながらこちらの攻撃はしっかりと防御し、さらにそのために発見が極めて困難なステルスを探知した上に全て破壊。おまけとばかりに不敵な笑みを浮かべながらの決め台詞。
この男は、20に及ぶ数の操作端末を同時に且つバラバラに操作しながらこれだけのことをやってのけた。
この男の処理能力は完全に常軌を逸している。文字通り人力スーパーコンピューターではないか。
このQBUとやらも大したものである。No.6の浮遊物体は、ステルスと高度な探知と攻撃を同時に行おうとするとバーストする。QBUはその操作に耐えうるだけの容量と機能が組み込まれているということだ。
No.6が観念したのを確認すると、ツェリライはQBUの包囲網を解いた。
「いいのか?我はまだ何かを隠し持っているやもしれんぞ?」
No.6は何か口に含むような物言いをするが、ツェリライはさらりと言い返した。
「残念ですが、既に貴方は丸腰であることを確認しています。ブラフは通用しませんよ。」
全てお見通しというわけか。ではもうこちらがあやつにしてやることは無い。
だが、それでも口を出さずいられなかったのは、やはり負けたことが悔しかったのだろう。
「それでも己の身を確実に守るには少なくとも我を行動不能の状態にしておくべきではないかえ?」
ツェリライは、今度は返答するのに少し間が空いた。
「そうですね・・・。理屈で考えれば貴方の言うことが正しいのでしょうが、僕もむやみに人を傷つけることは好みではないので。まあ、僕の気まぐれとでも思っておいてください。」
「戦闘に立つ者の心構えとしては随分と甘ったるいものよの。」
「先程も言いましたが、僕は科学者ですから。その力はできる限り人を殺すのではなく、人を活かすことに使いたいというのが心情です。」
「されども、このような場に立っている以上、主の言っていることはダダ甘じゃ。」
「自覚はしていますよ。ですが、辛味や苦味に関しては、請け負ってくれる仲間がいますから、今の考えを変えようとは思っていませんね。」
ああ言えばこう言う。このままでは埒が明かないと二人とも思ったのだろう。そこから先は両者とも何も口に出さなかった。
ただ視線の先は同じ、再び下に降りてきていたルインと、その向こう側に相対しているフォートだった。

〜ルイン VS フォート〜
他の勝負の決着がつき、フォートも銃の修理が完了した。ルインも戦闘前の準備運動を済ませ、準備は万端だ。
「さてと、皆の勝負が終わったことだし、僕らも始めますか。」
手首足首をぐるぐる回し、深呼吸したところでルインは腰の刀に手をかけた。フォートも銃を構える。
表面上は余裕を装っていたルインだったが、内心ではどうすればいいか真剣に考えていた。
フォートは白兵戦においては無類の強さを誇る。遠近両方に対応した戦闘スタイルに加え、極めて100%に近い命中率を誇る射撃。
何より相手の一挙一動を決して逃すことのない眼がある。
そんなフォートに勝るためには、フォートが対応できない事態を引き起こし、その一瞬を突くのが最良である。
といっても簡単な話ではない。なにせフォートはカウルのスピードにさえあっさり対応できてしまうのだから。
ならばやることは一つ。ルインは腰を深く落とし、思い切り高く跳躍した。
そのままフォートの真上まで飛び上がり、一気に急降下する。放たれた銃弾は、銃口の角度からおおよその位置を計算して刀で防御する。
これでこのまま落ちればフォートに一撃を入れられる。よしんば避けられたとしても、対策は考えてある。
「刈閃(げせん)!!」
大上段から振り下ろされる豪快なジャンプ斬り。ルインの予測通り、フォートは後ろに跳んでかわした。
そこから再びこちらに銃口を向け、狙いを定める間にルインは刀の鞘を思い切り投げつけた。
ただの投擲とはいえ、さすがにこの距離では撃ち落とすのは間に合わない。フォートは狙いを定めることを中断し、銃ではじき落とした。
しかし、はじき落とされたのはフォートの銃のほうだった。
実はルインの鞘は、刀を失った時に鞘でも攻撃できるように鋼鉄が仕込んである。故に普通の刀の鞘よりも重い。
もちろん途轍もなく重いというほどではないが、想定外の重さが腕に加わると、思わずその手の力を抜いてしまう。さすがのフォートもこれは例外ではない。
本当ならば両銃とも落としたかったがこの際贅沢は言わない。ルインは無理矢理こじ開けた隙に向かって一直線に突っ込んだ。
フォートがもう片方の銃で撃つよりもこちらの一撃のほうが早い。この勝負
「もらったぁ!」
この時点で、対戦者を含める誰もが勝負はついたと思っただろう。
ルインももちろん確信していた。
しかし、その時ルインの視界の隅で予想だにしないものが映った。
フォートがもう片方の銃を手放したのだ。
思わずルインは一瞬そちらのほうに視線を向けた。
あくまで逸れたのは視線だけ。ルインの挙動は全く変わっていなかった。本当にほんの少しだけルインの視界からフォートの全体像が外れたにすぎない。
それをフォートは決して逃さない。
フォートは大きく後ろに下がりながら体を一回転させた。
遠心力にひかれ、その体には不釣り合いなほど大きく白いロングコートが舞い、ルインの視界を遮った。
一瞬足が止まる。だが勝機はまだルインの下にある。距離を離されたならこちらはさらに距離を詰めて斬り込めばいい。
今のフォートは丸腰。スピードはルインのほうが上。ルインは距離を詰め、一撃で沈めにかかる。
「破断―――」
コートの目隠しの隙間からフォートが落ちている銃に向けてワイヤーを飛ばしているのが見えた。
しかし、ワイヤーで拾って手元に戻し、再びルインに向けて発砲するまでに、ルインは己の剣戟を余裕で数発叩き込むことができる。どうあがいても詰み。チェスで言う「チェックメイト」だ。
ワイヤーが銃に巻きつき、引き寄せられる。その時銃口がルインの方に向けられたのが見えた。
その時、ルインの背筋に電流のような悪寒が走る。