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ACT ARME9 ~人と夢と欲望と

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本当ならハルカにNo.7の気を引かせて、自分は地なり木なりの技で拘束するのが一番手っ取り早いのだが、ここに来る前に、ツェリライから忠告されているのだ。
もし戦闘になった場合、地下であるこの場所で地属性や木属性の技を使用すると、地盤が緩み崩落する恐れがあると。
ほかのアコの技は総じて殺傷力が高い。だからアコは迂闊に攻撃できない。
「戦いの最中にのんびりおしゃべりしててもいいんですかぁ!?」
いつの間にかNo.7がすぐそばまで接近し、背を向けているアコにその刃を突き立てようとしていた。
間に合わない、やられる――――。そう思った矢先、ハルカが飛び出し攻撃を受け止めた。
そして今度は押し負けることなく、ハルカの風でNo.7を弾き飛ばした。
慌てず騒がず大きく後ろに跳んで着地するNo.7に、ハルカは決然と言い放った。
「アコさん。わかりました。私は、あの方を倒すためには戦いません。」
ハルカは、こう見えて結構頑固なところがある。だから、今倒さずして戦うと言った以上、戦って止めるという覚悟を決めた。
本当のところは、戦うのは怖いし恐い。でも、ここでいま自分が逃げ出せばこの男は今後も狂い続けるだろう。それは嫌だった。
だから戦う。きっとそれが、あの男にとって救いとなることを祈って。
「へぇ?面白いこと言うじゃねぇか。俺を倒さずに勝つって?だったらやって見せろ。やれるもんならなぁ!」
ますますヒートアップするNo.7を見て、ハルカは構える手に力を入れた。
だが、意外なことにNo.7は突っ込んでこなかった。いや、突っ込んでこようとした矢先に、前につんのめる様に体が傾いたというべきか。
もしかして、躓いた?
あまりに唐突だったので、思わずそんな心配をしてしまう。だが、どうやらそうではないようだ。
何やら先ほどのQBUに似た丸い浮遊物体と何やらがなり合っている。傍から見れば「喧嘩するほど仲がいい」ように見えるが、多分そのことを指摘したら憤慨して否定するだろうからしないでおいた。
しばしその状態が続き、ようやくNo.7はこちらに向き直った。
「待たせたな。 というか、よく律儀に待ってたな。」
「はい。不意打ちはしたくありませんから。」
無防備だった自分に対し何もしてこなかった二人をからかったつもりだったのだが、至極真面目に返されてしまった。
「あくまで俺を倒さずに勝つつもりか。初めはとんだ腰抜けだと思ってたが、どうやら見当違いだったみたいだな。
行くぜ!!」

二人の攻防を見ているアコは、今にも思いっきり歯ぎしりをして地団太を踏みたい衝動に駆られる。
ハルカの助けになることであれば何でもしたい。だが、今アコが入れば、間違いなく攻撃がハルカにもあたる。迂闊な手助けはできない。
でも、今のままただこうしてハルカの戦闘を眺めているだけで終わるのは絶対に嫌だ。
自分のこの力は自分のために使う。それはつまり、自分がもう後悔しない使い方をするということ。今ここで何もしなかったら、絶対に自分は後悔する。
もう自分自身を恐れたくないから。何も怯えずに胸を張ってみんなと一緒にいたいから。
私は・・・
「戦うって決めたのよ!」
アコはロッドを構える。
「ハルカ!後ろに跳んで!水精(ヴァルナ) エインフレインフェイル!」
アコの呼びかけに素早く反応したハルカが後ろへ跳ぶと同時にNo.7の周囲を氷の針が現れ、一斉に襲いかかる。No.7はそれも難なくかわす。
だが、その際にハルカへの注意が疎かになった。ハルカはしっかりとその隙を突いた。
「煽風(あおち)!」
桜鼓の刃ではなく、側面を団扇のようにぶつけ、纏わせた烈風と共に大きく吹き飛ばした。
壁際まで飛ばされたNo.7は、それでもしっかりと受身を取りダメージを殺した。
しかし、すぐさまアコが技を唱えた。
「水精(ヴァルナ) ゲフィアフェセル!」
態勢を整え、こちらに襲いかかろうとしていたNo.7の動きが止まった。見たところ、No.7の身体を拘束しているものは何もない。傍から見れば、パントマイムをしているように見えるだろう。
だがNo.7は、なぜ自分の体が動かないのかすぐにわかった。
凍っているのだ。自分に触れている空気が。まるで薄い膜のようにまとわりつき、鋼のように固く拘束している。
「クソがッ・・・!」
力任せに破ろうとするが、ビクともしない。
No.7が悪態を突きまくっている隙を逃さず、ハルカは懐から何かを投げつけた。
No.7の眼前の地面に叩きつけられたそれは、モワッと薄桃色の煙を上げた。その匂いをかいだNo.7は、膝から崩れ落ちることはできず、棒立ち状態のままバッタリと地面に倒れこんだ。
「ピィリスの花の成分を含んだ煙玉です。強い睡眠効果があるので、しばらくはこのままだと思います。」
「それじゃ、あたしたちが勝ったってこと?」
連続で技を使ったためか、アコは肩で息をしている。
対してハルカは息一つ切らさずに静かに頷いた。そしたらアコはまだ肩で息をしながら手を挙げて、ハルカの前に突き出した。
その意図が分からずに困惑していると、アコは不服そうな顔をしてさらに手を前に出した。
「え、えっと、これは?」
「これは?って、ハイタッチよハイタッチ。私たちは力を合わせてアイツに勝った。それもちゃんと目標通り倒さずにね。だから喜びのハイタッチよ。」
ほれほれと言わんばかりにぐいぐい詰め寄ってくるアコだったが、ハルカはあまり浮かれた表情ではない。
確かにアコの言うとおりではあるが、自分たちがしたのはやはり戦闘。あの男がいま自分たちに負けたことで、今後どうなってしまうのか。任務を達成できなかった罰を受けるのではないだろうか。ひょっとすると・・・。
ハルカの思考のデフレスパイラルを止めたのは、ハイタッチの構えから手を90度傾け、そのままハルカの額にヒットしたアコの空手チョップだった。
「何そんな暗い顔してんの。今ハルカは自分が立てた目標をちゃんと達成できたんだから、素直に喜べばいいのよ。」
そう言ってアコは笑った。ハルカもつられて笑った。
心のわだかまりが抜けたわけではない。でも、今はこうして笑っていたいとハルカは思った。

〜No.6 VS ツェリライ〜
「なかなか聡明な方ですね。一目で僕を相手に選んでくるとは。」
開幕早々、まだ互いの矛を交えることはおろか、自分の得物すら見せていない状態でツェリライが口を開いた。
そんな褒め言葉をかけられたNo.6はさしてうれしくなさそうに鼻をならした。
「ふん。その発言は嫌味ととれるぞ?思い切り我を誘いおった癖に。」
「やはり気づいていましたか。これは失礼しましたね。」
ツェリライは折り目正しく謝罪を入れるが、相手はさほど気に咎めてはいないようだ。その眼は愉しそうに笑っている。
「なかなかどうして面白味のある奴じゃな。して、それで我の相手をするつもりなのか?」
No.6の目線の先はツェリライ自身というより、そのさらに後ろ、ツェリライの背後に向けられていた。
すると、そこからふわりとQBUが浮かび上がってきた。
「ご明察です。奇しくも似た物同士の遠隔操縦対決(リモートバトル)となりましたね。」