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ACT ARME9 ~人と夢と欲望と

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その疑問は辺りを見回したらすぐに分かった。レックの一撃で飛ばされた際に手放した銃と、その近くにもう一つマスケット銃が転がっている。
おそらく所持しているのはこれだけではないだろう。フォートの四次元コートみたいに、どこかに何丁も隠し持っているのだろう。
振り返ってみると、No.8はつくづく相手を殺すことに向いているのだろうと思う。
戦いの最中に思考にふけり、無防備になってしまうほどの妖しい殺気。何気ない出で立ちの中に隠された狂気。そして隙あらば一瞬で相手の命を刈り取る狡猾さ。
マスケット銃という難儀なものを武器にしていたのも、一発しか弾が撃てないという事実を逆に利用して、相手の思考を乱し、そこに付け入るためというわけだ。
経験に裏打ちされた戦術、それを寸分の狂いなくやり遂げる冷静さ。まさに一瞬で獲物を捕らえる獣のような相手だった。
そんな相手に、レックは今応急処置を施している。
「あなたは今、何をしているのかしら?」
と、気がついたNO.8が目を閉じたままレックに尋ねる。
「何って、見ての通り治療だよ。最も、簡単な応急処置程度のものだけどね。」
そう話しながらも、動かす手は止めない。
「私よりも、まずあなた自身の方をどうにかするべきじゃないかしら?さっきからあなた、血生臭いわよ。」
言われて気がついた。そういえばさっきから頭の右側が生温かい。手をやってみると、血特有のぬめりとした感触が伝わった。
「うわ!?」
驚いて頭と腕をトップスピードで引き離す。おかげで少し首を痛めた。
おそらく、後ろからの射撃をぎりぎりでかわしたときに掠ったのだろう。
「今頃気づくなんて、随分とオマヌケさんね。」
全くもっていい返せる言葉がない。仕方がないから苦笑する。
「アハハ・・・。夢中になると結構周りが見えなくなるタイプだからね。でも、この程度の怪我なら大丈夫。かすり傷程度だから。」
そしてまたNo.8の応急処置に戻る。とりあえず、ギプスなんて持っていないから包帯で折れた腕を固定する。手持ちの包帯で足りればいいが・・・。
「あなたって不思議ね。わたしに止めを刺さないと、また命を狙われるかもしれないわよ?」
「別にかまわないよ。ボクはボクが決めた信念を貫きたいだけだから。」
目を閉じているので表情は分からないが、多分いい表情をしているのだろう。
「・・・バカね。」
「自覚してるよ。」

〜カウル VS No.4〜
No.4の初撃を、カウルは拳で打ち砕く。そのまま粉塵にまぎれて一直線に突っ込んでいく。
No.4は再びランチャーを構える。だが、次を発射するよりも、カウルの拳が届くほうが早い。
しかし、砲身から飛び出してきたのは砲弾ではなく、巨大な刃だった。
カウルはすぐさま軌道を変え、真上に跳んだ。常人の目なら、まるで突然姿が消えたのかと間違えるほどのスピードで。
そしてそのまま急降下して頭上めがけて攻撃を仕掛ける。というのはフェイクで、後ろから攻撃を仕掛ける。
「電閃(でんせん)!」
「そこだ。」
カウルの一撃は、間一髪で防御される。No.4はそのままランチャーを大きく振りぬいてカウルを遠くに飛ばす。
そのまま間髪いれずに次弾を発射する。今度は一度に多くの砲弾を撃ってきた。それもホーミング付きで。
カウルはぎりぎりまで引き付けて回避する。と、No.4の姿が見当たらない。
それは、すでに背後に回り込まれていたからだ。
「!!」
咄嗟に大きく前に跳んでかわす。
「くそ、あんなでかい物持っておきながらなんて速さだよ。」
カウルが愚痴る間もなく次の攻撃が来る。
と、今度は砲身を斜め上に掲げ、カウルのはるか頭上に向けて発射する。
その不可解な行動に、カウルの動きが止まる。何のつもりだ?
と、砲弾がカウルの真上に来た時、砲弾が破裂し中から大量の炸裂弾が降り注いできた。
「そういうつもりか!!」
こいつは一度距離を離してしまうと好き勝手にやられてしまう。回避にしろ何にしろ、とにかく接近するしかない。
そう考えたカウルが炸裂弾が降り注ぐ前に飛び出す。だが、その間にNo.4はカウルにしっかりと標準を定め、次弾を発射した。
再びカウルは拳を固め、砲弾を破壊する。しかし、その破壊した砲弾からすさまじい粉塵が巻き起こる。
「ッ!?」
突然目つぶしをくらい、口と目を塞ぐ。
この状況ではとても相手を見ることなどできない。ならば耳を澄ませて相手を感じ取る。やはりそこからはガチャリというコッキングの音が聞こえてきた。
しかし、カウルは疑問に思う。相手は自分に対して目つぶしをしてきた。基本的に眼つぶしが有効なのは近接格闘時である。だが、相手が所持しているのは思いっきり遠距離武器。まあ、零距離で殴れなくもないが、少なくとも今は離れた場所にいる。
そこからこちらに向けて砲弾を撃ち込んだとしても、上か横に跳べばあっさりかわせてしまう。
そんなことも分からずに眼つぶしをしてきた?いや、それはないだろう。だとしたら別の目的があるはず・・・。
粉塵を周囲に飛ばした別の目的、あるとするならば・・・
「! マズイッ!」
カウルめがけて発射された砲弾。しかしそれはカウルのもとに届く前に破裂し、爆発した。
その爆発自体はとても小さなものだ。カウルにダメージを与えるどころか、爆風が当たることもない。微妙に熱を感じられる程度だろうか。
しかし、その小さな爆発は確実に辺りに舞う粉塵に、確実に着火させた。
その小さな火種は瞬く間すら与えず巨大な爆発を引き起こし、周囲を焼き尽くした。粉塵爆発だ。
真白に曇っていた空間が、今度は真っ黒に焦げる。粉塵は灰に変わり、あたりに降り注ぐ。
しかし、そこに炭はなかった。あるのは灰と焦げた地面と空気、それだけだ。
No.4は構える。今ので仕留めきれていない。このどこにも隠れるところなどない場所で、こちらの視界から外れる方法は一つ。No.4は後ろを振り向き、頭上に注意を払いながら構えた。
しかし、そこにも目標の姿はなかった。
「ここだ。」
背後から声が聞こえた。これは紛れもなくカウルの声。No.4が反応するよりも先に、カウルの拳が入った。
そのままカウルはNo.4を拳で打ち上げる。そして急上昇するNo.4に向かって思い切り跳躍し、そのまま飛び越えた。そしてNo.4よりも高く上がりきった時に拳に雷撃を込め、無防備な土手腹に叩き込んだ。
「雷制(らいせい) 雷鎚(いかづち)!!」
雷雲など存在しないこの地下空間に、一閃の雷鳴が轟いた。

No.4はゆらりと立ち上がる。自身から焦げ臭さを漂わせながらも、真っ黒に焦げた地面の上に立ち、ランチャーを構える。
「やめとけ。雷槌を喰らってなお起き上がれるのは大したものだが、そんなもん使ったら暴発起こすぞ。」
そう指摘され、手にしている兵器を見やる。
なるほど、カウルの言うとおりである。辛うじて形こそ留めているものの、本体は多数破損し、銃口は半分近く潰れている。こんなもので撃ったら、いや、撃つ事もできないか。
No.4はランチャーを手放した。すると、重いものを捨て、身が軽くなったはずなのに足腰に力が入らなくなり、そのまま膝立ちになって倒れた。