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ACT ARME9 ~人と夢と欲望と

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普通、ゼロ距離爆撃を食らったら「地味に痛い」ですむようなレベルではないはずなのだが。
体のあちこちが黒く焦げ、かすかに黒い煙を上げている。そんなグロウを見てもNO.2は楽しそうに拍手していた。
「おー。この攻撃を受けても平気なんて、グロウさんはほんとに頑丈なんだね。じゃあ今度は本気。連続で行くよー。」
そして繰り出される二本のアームの激しい連撃。グロウは受け止めるのをやめ、猛スピードで迫ってくるそれを片っ端からハンマーで弾き飛ばす。
だが、如何せん一撃が重いうえにえらく速い。加えて相手は遠距離攻撃故、なんとかして近づかなければ勝機がない。
いや、近づく必要はない。一撃、アームに一撃入れることさえできればそこから形成をひっくり返す自信はある。しかし、向こうはそれをさせてくれる気配はない。
「アハハハハハハハ!こんなに楽しいの初めて!」
相手は益々ハイテンションになっている。いくらこちらが攻撃を返せるからって、限度というものがある。
そしてついにグロウはアームに捕えられた。しかも今度は片方のアームではなく、二本のアーム両方に挟まれる形で。
「アハッ。つーかまーえた♪」
No.2は捕えた獲物を戦利品を見せびらかせるようにゆっくり持ち上げる。
「グロウさんとの対決はとても楽しかったけど、これでおしまいにするね。」
そして再び感じるかすかな熱気と、爆弾の導火線に火をつけた時のようなシューという独特の音。これも片方だけではなく両方のアームから感じる。
「これで終わりだぁ?確かにそうだな。ただし負けるのは、てめぇの方だがな・・・!」
グロウはアームからはみ出していた腕を強引に動かし、ハンマーの先端をアームの側面に当てた。
「鉈慌(じゃこう)!!」
気合一発。グロウは己の孔をハンマーに込め、一気に放出させた。
片方のアームの先端が砕け散る。その衝撃でグロウは拘束から解放された。
「捕まえたのはてめぇじゃねえ。俺のほうだ!」
地面に着地し、そのまま思い切り孔を込める。それを残ったアームに全力で叩き込んだ。
「ギガント・ホームランハンマー!!」
その衝撃を真正面から受けたアームは、中心から真っ二つに裂け、勢い余ってそのまま裂けるチーズのように先端から根元まで一気に二股に分かれた。

「えへへ。負けちゃった。ほんとに強いのね、グロウさん。」
起動不能に陥ったアームをだらりと垂らし、少し残念そうに笑うNo.2。力なく地面に横たわっているアームは、真正面から見れば超太くて長いツインテールに見え・・・ないか。
「きっとまたいつか対決してね。約束だよ?」
少し寂しさが混じったようなNo.2の声。グロウはそれに答えず、フンと鼻を鳴らし後ろを向いた。
「約束なんざできるか。また戦りたきゃ自分から来い。」
その時の表情がどんなものだったかは、誰も見ていないからわからない。

〜No.8 VS レック〜
レックは、戦闘がはじまったときから疑問に思っていた。それは、相手が手にしている武器、マスケット銃のこと。
マスケット銃はその性質上、一度発砲すれば再び弾丸を込めなければならない。故に、コレクターが趣味で集めることはあっても、実戦登用する者など普通はいない。
しかし今レックが対峙している相手は、まさにそのマスケット銃を得物にしている。先端に刃がついた銃剣ならまだしも、そういうわけでもない。
一見ただのマスケット銃見えるだけで、実は何か隠された機能があるのかもしれないが、先ほどからその長い銃身を振り回す近接格闘を繰り広げており、まだ一度も撃ってこない。
一体何を考えている?レックは闘いながらも思案する。しかし、答えは見つからない。
ならば選択は一つ。相手が何か動きを見せる前にこちらが仕掛ける。先手必勝。レックは相手の横振りを紙一重でかわす。No.8は勢いそのまま体をひねり、レックに対して横を向いた状態になる。レックはその生まれた隙に突っ込んだ。
その一瞬、少しだけ視界に入った紅い唇を見た瞬間、背筋が凍り、鳥肌が立った。それは、今まさにこちらを食らおうと跳びかかるために腰を深く落とした飢えた獣を錯覚させた。
視界端に映るNo.8の脚。それが体の捻りを加え、速度が増した蹴足となってレックに襲いかかる。その足が一瞬キラリと光ったのを、レックは見逃さなかった。
まずい!!咄嗟にレックは防御ではなく、上体を反らし回避した。目の前をかなりのスピードで過ぎ去る足。それが通過した空間が切り裂かれるのを、レックは肌で感じた。
きらりと光ったのは、おそらく靴に仕込んだ刃。どれほどの切れ味を持つのかは不明だが、レックが防御すれば反撃を喰らっていたあの状況で躊躇いなく使ってきたことを考えると、少なくともレックの棍を容易く真っ二つにする程度の切れ味はあるのだろう。咄嗟に防御から回避に切り替えたレックの判断は正しかった。
しかし、相手の攻撃ターンはまだ終了していない。No.8は、防御から無理やり回避に切り替えたため体勢を崩したレックに銃を突きつけ、発砲した。
レックは、それを読んでいた。だから崩れた体勢を無理に取り戻そうとせず、逆に敢えてそのまま後ろに倒れこんだ。
銃弾はレックの頭をかすめ、そのまま通り過ぎて行った。
「あら、やるじゃない。これを避けられた人なんてそうそういないわよ。」
感心したような表情をするNo.8。だが、その目は未だ愉しそうに笑っている。普通に見れば、ただ相手に微笑みかけているだけに見えるが、なぜか鳥肌が立つ。
先ほどまではただルージュを引いただけだと思っていた紅い唇も、変な方向に考えを持っていかれてしまう。あの唇の紅はひょっとすると・・・。いや、まさかそんなことはないはず・・・。
「戦闘中に思考に耽っていていいのかしら?」
ハッと我に返る。視界のなかにはNo.8は既にいなかった。
だが、その姿を探す必要はなかった。背後にヒヤリとした違和感を感じたからだ。
間違いない。自分は後頭部に銃を突きつけられている。このままだと撃ち抜かれる。やられる・・・。
「さよなら。」
トリガーが引かれ、銃声が鳴り響く。

やられる、わけには・・・!
「いかないんだぁ!!」
レックの後頭部に向けた零距離発射。このタイミングでは避けられないはずだった。しかしレックはそれを、完璧ではないとはいえかわした。
「えっ?」
No.8は想定外の出来事に驚く。レックは弾を避けた勢いそのままその場で一回転し、遠心力を加えた一撃を入れた。
「紅蓮趺撃(レッドシャンク)!!」
紅蓮と名が付いているが、その棍に炎は猛っていない。しかし、炎の持つ熱のエネルギーを一点に収縮、解放することで、その一瞬だけ文字通り爆発的な破壊力を放つ。
その一撃をもろに食らったNo.8はそのまま打ち上げられ、宙に舞い、地面にたたきつけられた。
レックはすぐさま駆け寄り、No.8の様態を調べる。気を失っているが、とりあえず命に別条はなさそうだ。と、ここでふと思い返す。そういえば、No.8は先ほどレックの後頭部に向けて発砲したわけだが、その前にすでに一度撃っている。再び弾を込める暇などなかったし、二発目はいったいどうやって撃ったのか。