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ACT ARME9 ~人と夢と欲望と

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ルインはくるくると舞いながら相手と距離をとり、愚痴る。
「ぬぅ。今のは完全に隙をついたと思ったんだけどなぁ。まさか妨害を受けるとはね。どういうつもりかな?フォート。」
ルインは自分の一撃を止めた相手、フォートに尋ねる。尋ねられたフォートはやはり無言だった。しかし、意思表示ははっきりとさせた。
フォートはゆっくりと手に持った銃をルインに向けたのだ。
先ほど、自分はフォートだと言った発言とは矛盾した行動に、ルインは少し考え込む。そしてフォートの意図が分かった。
フォートは、まだ自分はそちらに行けないと言っている。まだ自分はデリーターであり、ルインたちを葬る責務があると、そう言っているのだ。
そこまで考えたルインはフォートのその従順とも堅物ともとれる行動に苦笑した。
「まさか自分自身を人質に取るとはね。流石に予想できなかったわ。ま、フォートがそうしたいというならそれでいいよ。僕もそれに答えさせてもらう。」
といいながら、ルインはなぜか刀を鞘におさめた。
「どういうつもりだ?」
思わずフォートが尋ねる。その言葉を聞いた瞬間、ルインはしてやったり顔でニヤついた。
「よっし。ようやく僕の言動に口きいてくれたね。なんかレックにいつものお株奪われてた感があったから一矢報いてやりたかったんだよね。」
ニヒヒと笑うルインを前に、フォートはもう一度銃を向けた。先ほどとは違い、なんか殺気が込められている気がする。
それを感じ取ったルインは思わず両手を挙げた。
「ストップストップ。怒ったんなら謝るからさ。まあ僕とフォートの対決は一番最後がよくない?今の話の流れ的にさ。それに、フォートの銃、確か片っぽ壊れてたよね?今のうちに交換なり修復なりしといたら?」
実はあの時フォートの銃が片方破損していたのを目敏く見つけていたのだ。
そう促され、フォートは下がった。その様子を見ていた黒ずくめの男は不可解だという様子を見せた。
「ずいぶんと余裕の態度を見せるのだな。今私を守る者はいない。そちらの気一つで簡単に首をはねられるはずだが?」
「んー。まあさっきまでは不意打ちで終わらせようかと思ってたけどさ。さっきのフォートの様子を見てたらそれやるのは卑怯かなと思ってね。向こうが決闘を求めたのならこちらもそれに応えるべきでしょう?」
先ほどまでとは打って変わって、一切の含みや屈託のないにやり顔でそう言い切った。
「あ、でも今のとこ決闘だと思ってるのは僕だけかもしれないから、他の皆がずっこい手段使って勝っても文句言わないでね?」
思い出したように付け加えるルインだったが、心中ではそんな事をするとは思っていなかった。
グロウは真っ向から相手をぶち抜く生粋の脳筋だし、レックとハルカは性格的にしようとしないだろうし、アコはそもそもそうすることを考え付くとは思えない。強いて挙げればカウルとツェリライぐらいだろうか。
敗北の可能性?それはもっとない。この連中の火事場の馬鹿力は知っている。根拠はないが自信はある。

かくして、六局の対決の火蓋が切って落とされた。

〜No.2 VS グロウ〜
「凄いね。わたしの攻撃を喰らって平気で立っているのはあなたが初めて。あなたのお名前は?」
可愛らしい声で嬉しそうに尋ねてくる。しかし、その笑顔の後ろにあるものが物騒すぎてかなりシュールだ。
後ろにあるもの。それは少女のリュックから伸びている二本のアーム。可愛らしい装飾がついていれば物騒さが緩和されたものの、鈍色に光るそれは何やら重工業やってる工場の解体所にあるアームのようにしか見えない。
何が言いたいのかというと、断じて人に向けるようなものでない代物を笑顔で躊躇なく向けてくるこの少女は怖いということだ。
対するグロウは、久々に暴れがいのある相手を見つけて愉しそうに凶悪な笑みを浮かべている。
どのくらい凶悪かというと、そんじょそこらのチンピラだったら瞬時に履いている靴を献上し、初速から最高速の全力ダッシュで逃げるほどの凶悪さだ。
「グロウだ。てめぇの名は?」
「わたしはNo.2だよー。」
少女は無邪気に言葉を続ける。
「これまでわたしと対決した人はみんなすぐペッチャンコに潰れちゃうから面白くなかったの。でもグロウさんならすごく頑張ってくれそうだから楽しみだな。」
その様はまるで今日一日に起こった出来事を嬉しげに親に話している娘であるかのようだ。
いや、本人は本当にそのつもりで話しているのかもしれない。彼女にとって任務の遂行は遊戯であり、今度の遊び相手はそこにいる頑丈そうなおじさんだという認識なのかもしれない。
普通ならこんないたいけな子供がそんな頭のねじが外れたような思考回路になるだろうかと思うかもしれない。
だが、子供は世界を知らない。今自分の目に映っている場所が「世界」なのだ。たとえどれだけ世界の常識とかけ離れていようと、それがその「世界」の常識であれば、それは至極普通のことなのだ。
それを、グロウは知っている。だからNo.2の放つ言葉に対しても全くひるむことはなかった。むしろ、己の闘争本能をさらに加速させる火種になった。
「前口上なんざどうでもいい。とっとと始めるぞ。」
ギラリとした闘争心むき出しの笑みを浮かべハンマーを構えるグロウに対し、No.2は嬉しそうに楽しそうにニコリと笑った。
「うん。じゃあ行くね。」
猛スピードで突っ込んでくる二本のアーム。グロウはそれを回避する素振りすら見せず、真正面から受け止めた。
しかし不意打ちでくらった先程とは違い、しっかりと構えて受け止めたため、今度は吹っ飛ばなかった。
「オラァ!」
そのまま投げ飛ばすかのように返した。
「効かねぇなあ。ごついのはその見た目だけか?」
鼻で笑い、退屈そうに首を回す。このあからさまな挑発にも、No.2は憤慨することなく、すごいすごいと手を叩いて喜んだ。
「感心ばっかしてないでてめぇもまともな攻撃してこいや。退屈しのぎにもならねぇぞ。」
「わかった。次はもっと強いの行くね。」
その言葉通り、先ほどよりも速度が格段に上がった一撃が迫る。そしてやはりグロウは一切回避せずに真正面から受け止めた。
足が若干地面にめり込み、それでも勢いを殺しきれずに後ずさる。だが、数十センチ程度の後退でそれも止まった。
再び相手に投げ返そうとしたその時、グロウはアームの先端が熱を放っていること、わずかだが爆弾の導火線に火をつけたようなあの独特なシューという音が聞こえることに気づいた。
直後、グロウは理屈ではなく本能で危険を感じ、急いでアームを投げ返そうとした。
だがそうする前にアームから5本の爪が伸び、グロウを捉えた。
「クソがッ・・・!」
力任せに破壊しようとしたが、その前にグロウが感じた危険が現実になる方が早かった。
「ボミングシェイカー!」
まるで元気が取り柄の女性司会者が次のコーナーを発表するようなノリで技名を呼ぶ。
そして、アームに捕らえられたグロウは、アームのかすかに熱を放っていた部分が爆発し、ゼロ距離爆撃を受け吹っ飛ばされた。
そのまま地面に叩きつけられ、る前に体勢を立て直し、強引に両足で着地した。
「んの野郎が。妙な手品仕込みやがって。地味に痛ぇじゃねえか。」