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ACT ARME9 ~人と夢と欲望と

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そしてフォートは先ほどから等間隔のタイミングで発砲し続けていた。それに合わせて動いているルインはいつの間にか合わせているのではなく、合わせられていることに気がつかない。
同じタイミングでほぼ同じ動作を続けている。このループが突然崩された時、この男の崩壊が始まる。
フォートはずっと同じタイミングで打ち続けると見せかけ、一度だけ非常に短い間隔で、それも前の弾丸で後ろの弾丸をブラインドさせて発射した。
それに気付けなかったルインは、前の弾をはじいた直後、血を吹き出しながら倒れた。

終わった・・・か。フォートがルインに止めを刺すため歩み寄ろうとしたその時だった。
倒れていたルインがゆっくりと上半身を起こす。肩からとめどなく流れて来る血を腕で押えながら。その口からは笑い声が漏れていた。
「いや、やっぱりフォートは強いよ。こんなこと言うと何だけど、こんなに強い相手だと、・・・本当に愉しくなってくるねえ!」
その時フォートは反射的に後ずさり、距離をとった。この男は危険だ。誰に言われるまでもなく、何か根拠があるわけでもなしに確信する。
ルインは怒っているようには見えない。言葉通りその顔には喜んでいるような笑顔だ。
だが、絶対に普通の笑い顔ではない。下手なホラー映画などお呼びでないほどの悪寒、背筋から離れることを知らず走りまわる悪寒、急速に体から水分を奪っていく悪寒。
これは・・・恐怖なのか?
ルインが猪の如く一直線に突っ込んでくる。気のせいではない。先ほどより明らかにスピードが上がっている。
しかし、いくら速かろうとフォートが狙いを定め撃つほうがはるかに早い。
至近距離で放たれる弾丸。ルインはそれを見もせずに刀ではじき落とした。
そんな馬鹿な。この距離で弾丸をはじき落とすとなると、こちらが発砲するより先に動かなければ不可能だ。
この男は、一体・・・
「残念だけど、これで締めさせてもらおうかね!」
ルインはフォートの銃身を切り落とす。そして刀を鞘におさめ、抜き放つ。
「剣界(けんかい)!!」
その刹那、相手は斬撃の結界に取り込まれ、斬り刻まれる。
その一部始終を、黒ずくめの男は決して誰からも見られることのない眼を大きく見開きながら凝視していた。

「ふぅ。かなり際どい、紙一重の差だったけど、僕の勝ちだね。」
刀を鞘に収め、その場に座り込むルインと、仰向けにドサリと体を投げ出しているフォートに、ハルカとアコが駆け寄る。
肩の怪我を診てもらいながら、ルインは黒ずくめの男の方を見る。
「さてと、これで認めていただけましたかね。フォートの件と、僕のお命頂戴の件。ていうかこれ、実質この組織壊滅させたようなもんだよね僕ら。」
黒ずくめの男はやはりすぐに返事を返さない。
「己の正義こそ真理と信じ、今日まで戦ってきた者たちは、敗れればどうなる?」
ルインはすぐに返事を返す。
「ん〜?まあ普通なら敗者=悪として裁かれておしまいかな?特にお前たちがやってたことは大衆の賛同を得られるかといえば超怪しいし。」
黒ずくめの男は何も言ってこないのでルインが勝手に続ける。
「お前が心配しているのって、ここに残った部下のことでしょ?多分大丈夫だよ。まあ、表社会を大手を振ってとはいかないだろうけど、まあ裏社会では生きていけるようにしとくからさ。」
それはつまりまたヒネギム係長に負担をかける・・・と言いたいところだが、あの人は実働係なので逮捕された人の処遇については管轄外である。
ならどうするのか皆目見当がつかないが、良くも悪くも有言実行を貫くこの男がやると言った以上はやるのだろう。心なしかツェリライのため息が聞こえた気がした。

「悪意により生み出された種が植えられ、やがてそれは芽を出し実を成す。それが再び地に落ち、如何なる花を咲かせるか、見届けさせてもらうぞ・・・。」
その言葉は、ルインに真っ直ぐ向けられ突き抜ける。
その感触に、ルインはこれまでにない奇妙な感覚を覚えた。
「お前、一体何を知って・・・」
しかしルインの言葉は、大きな地響きによって遮られる。
「No.1、否、フォートよ。後の者達は『全て』頼む。」
そう言われたフォートは、周りを見回し、今を受け入れたような表情をしているNo.6と、残りの気絶した者たちを確認し、黒ずくめの男に無言で頷いた。

ルイン達とデリーターの面々が脱出後、拠点となっていた地下基地は崩落した。
しばらくしてから、ルインはいつものように治安部隊に通報したが、あの地響きは結構大きいものだったようで、通報前から動いていたようだ。
フォートを含むデリーターたちは一度捕縛、そして街ではなく国の裁判へとかけられた。
本来ならばその罪状で一生外に出られなくともおかしくないのだが、標的にされた者たちが軒並み黒い噂が絶えない(中には犯罪スレスレの行いをしているものもあった)ため、ヘタに重罰を課すと、国民からバッシングを受けるのではないかとひより、しばらくの拘留の後、政府の裏取引で各々が役に立てるような部署に置かれることになったそうだ。
そしてルインは、騒動後からしばらくは考えにふけることが多くなっていた。
あの最後に黒ずくめの男が残した言葉。あれはただルインを危険人物として見ていたわけではない気がしてならないのだ。
しかし、いくら考えたところで答えは見つかるはずもなく、後日戻ってきたフォートに聞いても何もわからないとのことだったので、その段階でそのことは考えないことにした。
答えが見えない疑問をふくらませたところで頭の容量の邪魔になるだけだ。もし自分に必要なことであればいずれ分かることだろう。
取りあえずは自分の身に迫っていた危険をとっぱらうことができた。
取りあえずそれだけでコーヒーはうまい。